不動産相続でトラブルになる7つのパターンと解決方法

 

遺産の中に不動産が含まれていると、相続人同士で話し合っても合意できずトラブルになるケースが非常に多いので、注意が必要です。

相続財産に不動産が含まれているケースは数多くあり、適切に対応しないと深刻なトラブルとなってしまう事例は少なくありません。

相続人は正しい法律の知識を持ってお互いに譲り合いながらスムーズに遺産分割を進める必要があります。

今回は不動産相続でもめてしまう典型的な7種類のパターンや解決方法について、弁護士が解説します。

 

不動産相続でトラブルになりやすい7つのパターン

不動産を相続したとき、以下のようなトラブルが発生するケースがよくあります。

  • 特定の相続人が独り占めしようとする
  • 不動産を相続したい相続人が代償金を払えない
  • 評価方法で意見が合わない
  • 売りたい相続人と残したい相続人がいる
  • 空き家のまま放置する
  • 名義変更をせず放置する
  • 相続税を払えない

 

それぞれがどういったトラブルなのか、またどうやって解決すれば良いのかみていきましょう。

 

1.特定の相続人が独り占めしようとする

 

長男などの相続人が「自分がすべての遺産を相続する」と主張するパターンです。

年齢の高い人に多いのですが、戦前の家督制度の感覚からか「家を継ぐ長男がすべての遺産を相続して当然」と考えているケースがあります。

 

ただ、現在の民法では子どもの相続権はすべて平等なので、他の兄弟姉妹が同意しない限り、長男が一人で全部相続できません。多くの場合、他の兄弟姉妹も自分の相続分を主張するので、長男と意見が合わずもめてしまいます。

 

解決方法

長男に理解を求める

まずは長男に対し、現在の民法では家督制度が認められないことを伝え、理解を求めましょう。

「現在の民法では、兄弟姉妹が全員等分の相続権を取得する」と納得したら、長男も無茶な主張をしなくなるでしょう。

 

調停を申し立てる

どうしても納得させられず遺産分割協議を進められない場合には、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てます。調停では調停委員が間に入り、長男が無理な主張をしていれば説得してくれるので、解決できる可能性も高くなります。

調停でも折り合いがつかなければ、「遺産分割審判」となり、裁判官が遺産分割の方法を決定します。その際には「法定相続分」に従った割合となるので、長男が不動産を独り占めすることはできません。子ども達は全員平等に遺産を相続して解決できます。

 

2.不動産を相続したい相続人が代償金を払えない

 

不動産が遺されたとき、親と同居していた相続人などが引き続いて居住するために不動産の取得を希望するケースもよくあります。

 

誰か1人が不動産を取得するときに平等に遺産分割するには、不動産を相続する相続人が他の相続人へ「代償金」を払わねばなりません。

お金がなければ代償金を払えないのでトラブルになり、遺産分割を進められなくなります。

 

解決方法

分割払いにする

代償金を一括で払えない場合、「分割払い」する方法があります。また他の相続人が妥協して「払える金額」まで代償金の金額を減額できれば、解決しやすくなるでしょう。

どうしても代償金を払えないなら、不動産を売却してお金で分けるしかありません。この場合、親と同居していた相続人は家を失いますが、やむをえないといえるでしょう。

 

調停を申し立てる

自分たちで話し合っても解決できない場合、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てます。

調停でも解決できなければ、最終的に遺産分割審判となって裁判官が遺産分割方法を指定します。

この場合、審判で「家の競売命令(強制売却命令)」が出る可能性も高くなります。しかし競売になると手間も費用もかかり、売れる金額は低くなりがちです。

競売を避けたいなら、調停までの段階で話し合いによって解決しましょう。

 

3.評価方法で意見が合わない

 

不動産は非常に「評価」の難しい資産です。スーパーマーケットの商品のような明確な「価額」がありません。相続税課税の際に適用される「路線価」と実際に取引される場合の「時価」も大きく異なります。

 

そこで相続人間で不動産の評価方法について意見が合わず、トラブルになるリスクが非常に高くなっています。たとえば代償分割するとき、不動産を取得する相続人は不動産の価額を低く見積もり、代償金を受け取る相続人は不動産の価額を高く見積もって意見が合わない場合などがあります。

 

評価額で折り合いがつかなければ遺産分割協議が成立しないので、いつまでも不動産を分けられません。

 

解決方法

平均値をとる・不動産鑑定を依頼する

不動産の評価方法について意見が合わない場合には、お互いの主張する金額の平均値をとるなどして譲り合って解決しましょう。

どうしても譲れない場合「不動産鑑定」をすれば適正価格を算出できます。ただし不動産鑑定するには「不動産鑑定士」という専門家に依頼しなければならず、費用が10~50万円程度かかります。

無駄な出費を抑えたいなら、価額についてはどこかで妥協すべきといえるでしょう。

 

調停を申し立てる

自分たちで遺産分割協議をしても解決できなければ、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てます。

調停も決裂すると審判となります。

審判になったら裁判官が当事者の提出した資料などをもとに「適正価格」を算定します。当事者の希望があれば、手続き内で不動産鑑定が行われる可能性もあります。

 

【関連リンク】不動産の評価方法 ~遺産相続で知っておくべき知識~

 

4.売りたい相続人と残したい相続人がいる

 

不動産の遺産分割方法には、不動産を残す方法と売却する方法があります。

売却すると、売却金を法定相続分に応じて分け合うので、公平な遺産分割が可能です。代償金を払うお金がなくても解決できるメリットもあります。ただ経費もかかりますし、不動産を残して次世代へ伝えていくことはできません。

相続人の中に「不動産を売却したい相続人」と「残したい相続人」がいると、意見が合わずトラブルになってしまいます。

 

解決方法

シミュレーションをして判断する

不動産は売るか残すかのどちらかしかできません。意見が合わないなら、話し合ってどちらかが譲る必要があります。

売却するメリットとデメリットを検討し、売却した場合の売却価額や経費のシミュレーションをしたりして、具体的に「どちらが得になるか」を考えるとお互いに判断しやすくなるでしょう。

どうしても解決できなければ、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てます。調停でも解決できなければ、遺産分割審判となって裁判所が不動産の分け方を決定します。

 

競売の注意点

なお裁判所が売却決定をするときには競売命令を下すので、相続人が自主的に売却する場合より価額が低くなってしまう可能性が高くなります。

それよりは、話し合いによって通常の手続きで売却した方がメリットがあると言えるでしょう。

 

5.空き家のまま放置する

 

親から実家を相続したとき、誰も住まないのに「想い出のある実家を売りたくない」という気持ちを優先して家を残し、空き家状態にしてしまうケースがあります。

すると管理の手間や費用が発生して、結局は相続人に負担がかかります。共有にすると、相続人の中に固定資産税を負担しない人がいてトラブルになるケースも少なくありません。

 

また、空き家状態のまま放置すると家が傷みやすいため、近所に迷惑をかけてしまい苦情もくるでしょう。行政指導が入る可能性もあります。

 

解決方法

実家を相続したとき、空き家のまま放置するのはお勧めできません。賃貸活用するか誰かが住むか、そういった対応ができないなら売却しましょう。

 

6.名義変更をせず放置する

 

不動産を相続したとき、きちんと名義変更をせず放置する方もおられます。

しかし名義変更をしないと、誰が所有者なのかが外目にわかりません。相続人が勝手に共有名義に登記をして、自分の共有持分(に見える部分)を売却してしまう可能性があります。

また、再度の相続が起こって次の世代が名義変更しようとすると、2代分の相続登記をしなければならないので大変な手間になります。

 

解決方法

不動産を相続したときには、必ずすぐに名義変更の登記をしましょう。

遺言書があれば遺言書を使って登記できます。遺産分割協議で解決したなら遺産分割協議書を使って登記申請しましょう。

名義変更登記には期限や放置した場合のペナルティがありませんが、トラブルを避けるためにはなるべく早めに手続きすることが重要です。

 

7.相続税を払えない

 

不動産を相続すると、「相続税」の負担が大きくなるケースがあります。特に昔からの地主の方で、不動産を多数相続されると莫大な相続税が発生する可能性があります。

相続税は「現金」で払わねばなりませんが、不動産をたくさん相続しても現金が手元に入ってこないので、税金を払えないのです。

遺産の中から相続税を払えなければ、相続人が手持ちの貯金を崩して税金を払わねばなりません。

 

解決方法

相続税を払えないおそれがある場合、生前に生命保険に加入しておくようお勧めします。

相続人を死亡保険金の受取人に指定しておけば、受け取った保険金で相続税を払えるでしょう。保険金には大きな相続税控除が認められるので、相続税対策にもなります。

また、不動産を売って売却金で相続税を払う方法もあります。できれば被相続人の生前に一部の不動産を売却し、相続税の納税資金を貯めておきましょう。

 

まとめ ~トラブルになってしまったら弁護士に相談を~

 

群馬県では、ご両親から土地や建物を相続するケースがとても多く、当事務所でもこれまで不動産の相続トラブルに関するご相談が多く寄せられてきました。

まずは一度、ご相談ください。

数々の相続トラブルを解決してきた知識、ノウハウで、あなたの相続トラブル解決のお手伝いをさせていただきます。

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