相続放棄と限定承認の違いは何ですか?
執筆者
弁護士 山本 哲也
相続放棄とは
相続放棄とは、被相続人の遺産を一切相続しないことです(民法939条)。
限定承認と単純承認
限定承認とは、被相続人の預貯金などプラス財産の範囲内で、借金などのマイナス財産を弁済するという留保条件を付けてする相続の承認です(民法922条)。
法的に正確にいえば、相続により承継した債務につき、相続人が相続財産を限度として物的有限責任を負う、ということになります。
反対に、被相続人のプラス財産も、マイナス財産も全て相続するというのが単純承認です。
限定承認は、単純承認と相続放棄の中間といったイメージです。
限定承認の具体例
具体的には、たとえば、被相続人の借金200万円、現金100万円を限定承認により相続した場合、相続人は100万円の限度で借金を支払う責任を負う、ということになります。
ただし、200万円の債務の承継はされているので、相続人が固有財産から残債務100万円を任意に支払えば、有効な弁済となります。
相続放棄と限定承認を行う際のポイント
相続放棄の特徴
相続放棄は相続人が単独で行えます(民法938条)。
限定承認の特徴
これに対して、限定承認は相続人が数人あるときは、共同相続人全員が共同してのみできる(民法923条)、という違いがあります。
それぞれの注意点
なお、相続放棄、限定承認のどちらも、相続開始を知ったときより3か月以内に、家庭裁判所への申立てが必要です(民法915条1項本文)。
申立てをしないまま3か月を過ぎると、原則として、単純承認したものとされますので注意してください(民法921条2号)。
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