「お前には何も遺さない」と言われた。何も相続できない?
執筆者
弁護士 山本 哲也
夫から「お前には何も遺さない」と言われましたが、何も相続できないでしょうか?(遺留分についてのご質問)
A 法律上の婚姻関係にある妻(配偶者)であれば、法律上遺留分が認められているので、例え、遺言でどのように書かれていたとしても、特別な事情が無い限りは配偶者としての一定の取り分は保証されます(民法1028条2号)。
遺留分とは、一定の相続人のために、相続に際して、法律上取得することを保証されている相続財産の一定の割合のことです。
この遺留分は、被相続人の生前の贈与又は遺贈によっても奪われることのないものです。
しかし、生前贈与、遺贈、相続分の指定、が過大な場合には、遺留分の侵害が生じることになります。
例えば、相続人が配偶者と長男Aの2人だけの場合に、被相続人が書いた有効な遺言があり、その内容が「全ての財産を長男Aに相続させる。」とある場合です。
この場合、遺留分を侵害された配偶者は、長男Aに対して、遺留分侵害の限度で遺贈されたものの返還を請求(遺留分減殺請求)することになります(民法1031条)。
その結果、配偶者には、最低限の権利として、法定相続分の2分の1が遺留分として認められ、長男Aには残りの財産が渡ることになります(民法1028条2号)。
なお、兄弟姉妹には、遺留分はありません(民法1028条柱書き)。
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