死因贈与とは何ですか?

A
1 死因贈与とは
死因贈与とは、贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与です。
贈与者と受贈者の契約(諾成契約)である点で、単独行為である遺贈とは異なりますが、贈与者の死後、効力が生じる点では、遺言者の死後効力が生じる遺贈と共通点があるので、死因贈与は遺贈に関する規定に従うとされています(民554条)。
判例は、贈与者の最終意思を尊重する立場から、方式に関する部分を除いて、遺贈に関する規定が準用されるとしています。方式性が不要であることから、自筆証書遺言として無効なものを死因贈与として認めることもあります。
どの規定が適用されるかは、個別的に検討されています。
2 他の規定との関係
(1) 撤回(民1022条)
夫が妻と死因贈与契約を結んだものの、夫婦仲が悪くなって別居し、妻は病気療養中の夫の看護もしないので、夫は死因贈与を取り消し、離婚調停を申し立てた段階で死亡した事案で、民法1022条を準用し、取り消しを認めたものがあります(最判昭47.5.25)。
他方、負担付の死因贈与で、受贈者が贈与者の生前に負担の全部又はそれに類する程度の履行をしていた場合には、贈与者の最終意思を尊重するあまり受贈者の利益を犠牲にすることは相当でないから、特段の事情のない限り、準用は相当ではないとし(最判昭57.4.30)、裁判上の和解による合意事項の一部としてなされた死因贈与についても、自由には取り消せないとしており(最判昭58.1.24)、具体的事案に応じて準用を限定する傾向がうかがわれます。
(2) 失効(民994条1項)
贈与者よりも受贈者が先に死亡した場合、死因贈与の無償性と撤回の準用が肯定されていることを理由に、民994条1項を準用し、死因贈与の効力は失われるとした事例があります(東京高判平15.5.28)。
一方、契約である以上、贈与者の一方的意思で撤回することはできず、受贈者には目的物を取得できるという期待権が生じていること、民法994条1項を準用する旨の明文の規定がないことから、準用を否定し、死因贈与の効力を認め、目的物は受贈者の遺産になるとした事例もあります(京都地判平20.2.7)。
(3) 遺言執行者
重婚的内縁の妻に対して土地・建物を負担付きで死因贈与をする契約を結び、その旨の公正証書が作成され、その中で執行者が指定されていた事案で、準用を認めた事例があります(東京地判平19.3.27)。
(4) 遺留分減殺
減殺の順序は、遺贈の後、生前贈与の前とする事例があります(東京高判平12.3.8)。
より詳しいことにつきましては、相続の実務に精通した弁護士にご相談ください。
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