協議による遺産分割はどのように行うのですか?

A
1 当事者
当事者は、遺産分割時において、遺産に属する物または権利に対する持分権を有する者です。当事者となるべき者の一部を除外して行われた分割協議は無効であり、当事者の請求により、再分割が行われます。
当事者となるべき者は、原則として共同相続人全員ですが、割合的包括受遺者(民法990条)、相続分の譲受人も含まれます。
胎児も共同相続人となります(民法886条1項)が、胎児には法定代理人がおらず協議に参加できないので、胎児の出生まで分割は許されません。
相続の放棄をした者(民法939条)、相続欠格者(民法891条)、被廃除者(民法892条・893条)は、いずれも相続人資格がなく、当事者ではありませんが、このうち相続欠格者や被廃除者に代襲相続人(民法887条2項・889条2項)があるときは、これらの者は、当事者となります。
2 協議の時期
分割協議は、相続開始後に行わなければならず、相続開始前の協議は無効です。相続人の範囲や遺産の範囲は、相続の開始によって初めて確定するものであり、相続に関する権利の相続開始前の処分は原則として認められていません(民法915条1項・1043条1項)。
3 協議の方式と内容
(1) 協議の方式
分割協議は、当事者全員が合意すれば成立し、特別の方式は要求されていません。しかし、遺産分割が当事者の合意によって成立したことを明らかにし、後日の紛争を防止するためにも、遺産分割協議書を作成しておくことが相当といえます。
遺産分割協議書には、相続人の範囲と遺産の範囲を特定し、誰がどの遺産を取得するのかを明らかにし、当事者全員が署名押印しなければなりません。分割協議書は、当事者全員が一同に会してこれを作成するのが望ましいですが、誰かが書面を作成し、個別に承認を得るとか、持ち回りで承認を得るなどの方法で作成しても構いません。
(2) 協議の内容
分割協議の内容にも特に制限はありません。当事者の意思によって自由に定めることができます。
当事者は、分割協議に際し、遺産に対する自己の共有持分を他の当事者に譲渡し、また、これを放棄することもできるため、法定相続分と異なる分割協議も、当事者の自由な意思に基づく限り、有効です。
このことは遺言がある場合も同様であり、相続分の指定や遺贈によって自己に帰属すべきものとされた利益の全部又は一部を放棄して、他の当事者に帰属させることもできるため、遺言と異なる分割協議も有効です。
より詳しいことにつきましては、相続実務に精通した弁護士にご相談ください。
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