【Q&A】「預貯金の仮払い制度」について知りたい

更新日:2023/04/27

以前は、相続人の一部と連絡が取れない等の事情で遺産分割が成立しなければ、共同相続人による単独での払い戻しはできませんでした。

 

しかし、2019年7月1日に施行された改正法により、

 

各相続人は遺産分割が終わる前でも一定の範囲で預貯金の払い戻しを受けることができる「預貯金の仮払い制度」が新設されました。

 

 

 

制度の内容や利用方法について、群馬県高崎市の弁護士がお答えします。

 

 

目次

1.相続人なのに預貯金の引き出しができなかった?

 預金債権の扱いについて、平成28年12月19日最高裁大法廷決定により、相続された預金債権は遺産分割の対象財産に含まれることとなり、共同相続人による単独での払い戻しができない状況になりました。

 つまり、一部の相続人と連絡が取れないなどの理由により遺産分割が成立していないような場合、被相続人の預金口座から金銭を引き出すことができない状態となっていました。

 生活費や葬儀費用の支払い、債務の弁済などの資金需要がある場合でも遺産分割が終了するまでの間は、被相続人の預金の引き出しができず、残された家族の負担が大きくなってしまうケースがあったのです。

 

2.法改正で遺産分割前でも預貯金の払い戻しが可能に

 このような問題に対応するため、2019年7月1日施行された改正法により、被相続人の預貯金に関し、家事事件手続法上の保全処分の要件の緩和と預貯金の払戻制度が創設されました。

 

保全処分の要件緩和とは

 保全処分の要件緩和については、「共同相続人の急迫の危険を防止する必要がある場合」という限られた場面でしか制度の利用ができない状況でした。
 そこで、債務の弁済、生活費の支弁その他の事情により預貯金債権を行使する必要があると認めるときであれば制度を利用できるように要件を緩和しました。
 

 端的にいうと、仮払いの必要性があると認められる場合に他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められるようになりました。

 

預貯金の払戻制度とは

 預貯金の払戻制度については、被相続人の預貯金の一定割合について、家庭裁判所の判断を経なくても支払いを受けることができるようになりました。

 具体的には、相続開始時の預貯金額の3分の1に払い戻しを請求する共同相続人の法定相続分を乗じた額については、単独で払い戻しの請求をすることができるようになりました。
 ただし、金融機関ごとに上限金額が150万円とする旨が省令により定められています。なお、本規定については、2019年6月30日以前に発生した相続にも適用されます。

 

3.まとめ

 上記のように、2019年6月30日までは、共同相続人単独では被相続人の預貯金を引き出すことはできませんでしたが、同年7月1日以降に預貯金債権を行使すれば、被相続人の口座から一定額の預貯金を引き出すことを請求できるようになりました。

 しかしながら、払い戻しを受けるためには家庭裁判所への申立が必要であるため、裁判所が新しい制度についてどのように運用を行っていくか、注視していく必要があるでしょう。

 個々のケースでより詳しい事をお知りになりたい方は、相続問題に精通した専門家にご相談されることをおすすめします。

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