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公務員が収益不動産を相続して収入を得る場合の注意点
- 執筆者弁護士 山本哲也
「公務員は収益不動産を相続していいのか」とお悩みでしょうか?
公務員の方は、原則として副業(兼業)が禁じられています。
不動産から収入を得る場合にはルールに抵触するおそれがあります。
不動産を相続したケースについても、規模や種類によっては許可を得なければなりません。
本記事では、公務員が収益不動産を相続して収入を得る際の注意点を解説しています。
遺産の中に収益用不動産がありお困りの公務員の方やご家族の皆様に知っていただきたい内容ですので、ぜひ最後までお読みください。
目次
不動産収入は副業に当たるのか
公務員は副業(兼業)が原則として禁じられています(国家公務員法103条、地方公務員法38条)。
営利目的で副業をする際には、許可が必要です。
公務員の副業が制限されている理由としては、職務に専念するため、守秘義務を守るため、公務員に対する世間からの信用を失墜させないためといった点が挙げられます。
企業に勤務することだけでなく、「自ら営利企業を営むこと(自営)」も禁止の対象です。
私的に所有する不動産から賃料収入を得る場合にも、自営に該当し得ます。
国家公務員については、不動産の賃貸が自営に該当するか否かの基準が人事院のルールで規定されています。
地方公務員についても、各自治体が同様の定めを置いているはずです。
不動産賃貸が副業に該当するかを判断するには、あらかじめルールを確認・把握しておかなければなりません。
賃貸物件を相続した場合
まず考えられるのは、賃貸物件を公務員が相続したケースです。
国家公務員については、不動産の賃貸が以下のいずれかに該当する場合には自営と判断されます。
- 独立家屋(一戸建て):5棟以上
- アパート:10室以上
- 土地:契約件数10件以上
- 劇場、映画館、ゴルフ練習場等の娯楽、遊技のための設備を備えたものである
- 旅館、ホテル等の特定の業務に供するものである
- 賃料収入が年500万円以上
これらのいずれかにあたる場合には、副業の許可を得なければなりません。
いずれにも該当しないのであれば申請は不要です。
許可が必要な場合であっても、相続により不動産を取得した場合には認めれられやすいとされています。
とはいえ、無断で収益を得ていると処分の対象になってしまいます。
最悪の場合、職を失うおそれもあるため、該当するときには必ず許可を申請してください。
駐車場を相続した場合
被相続人が駐車場を経営しているケースもあるでしょう。公務員が駐車場を相続したケースについては、以下のいずれかの場合に自営と判断されます。
- 建築物または機械設備を設けた駐車場である
- 駐車台数が10台以上
- 賃料収入が年500万円以上
上記のいずれかに該当するときは、必ず許可を申請するようにしてください。
なお、賃貸物件と駐車場の双方を相続したときは、合計して年500万円以上の収入があると申請が必要になります。
不動産の相続でよくあるトラブル
不動産を平等に分けるのは難しいため、一般的に不動産相続ではトラブルが生じやすいといえます。
特に遺産のうち不動産の占める割合が大きい場合には難航しやすいです。
典型的なトラブルとしては以下が挙げられます。
- 誰が不動産を取得するか決まらない
- 公平に分割できず不満が噴出する
- 分割する際の不動産評価額について合意できない
- 不動産を取得しようとする相続人が代償金を支払えない
- ひとまず共有としたが管理・使用方法や維持費について争いが生じる
不動産相続は通常でも困難を伴いますが、相続人に公務員がいると問題が複雑化する可能性があります。
たとえば、副業と判断されないために不動産を与えないようにすると、公務員である相続人の分け前が減ってしまいます。
現金で調整しようにも、不動産の価値が高いと代償金を用意できず、平等に分けるのが難しいでしょう。
そもそも、副業になってしまう規模の不動産収入があるようなケースでは遺産総額も大きくなるため、相続人同士で争いが生じやすいです。
遺産に多数の収益不動産があるうえに相続人に公務員がいる場合には、遺産分割の難易度は高くなります。
まずは弁護士にご相談ください
ここまで、公務員が収益不動産を相続する際の注意点を解説してきました。
遺産の中に収益不動産がある場合には、相続した公務員が副業の許可を得なければならない可能性があります。
基準を把握したうえで、必要に応じて申請するようにしてください。副業の問題とは別に、分割方法をめぐってトラブルになるケースもあります。
公務員が収益不動産を相続する場合は、弁護士法人山本総合法律事務所までご相談ください。
当事務所は、群馬県内でも規模の大きな弁護士事務所のひとつです。群馬・高崎に密着して、相続に関する数多くの相談を受けて参りました。
ご相談いただければ、副業に該当し得るか、分割方法は適切かといった点をアドバイスいたします。既にトラブルが生じているケースでも、交渉や裁判所での手続きをお任せいただけます。
「公務員が収益不動産を相続して問題ないか」「不動産の分け方が決まらない」などとお困りの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。