養子に相続はできるのでしょうか?
- 執筆者弁護士 山本哲也
目次
1.養子縁組とは
養子縁組とは、親子関係にない者の間で、新たな法律上の親子関係を作り出すという制度です。
民法では、「養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する(民法809条)」としています。嫡出子というのは、法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子どものことです。
つまり、養子であっても、実子である兄弟姉妹と同じように、養親の財産について相続権があり、その法定相続分も実子と同じということになります。
相続人となることが出来る養子の数に制限はありませんし、相続できる割合(法定相続分)について養子と実子との間で差が設けられているということもありません。
なお、養子には、普通養子縁組と特別養子縁組がありますが、以下で説明いたします。
2.普通養子縁組と特別養子縁組とは
養子には〝普通養子縁組〟と〝特別養子縁組〟の2種類があります。
普通養子縁組
普通養子縁組とは、実親との親子関係を継続したまま、新たな親子関係を作り出す制度です。
子が普通養子縁組を交わし、養親の嫡出子としての身分を取得しても、実親との親子関係が断ち切られるわけではありません。
そのため、普通養子縁組をした子は、養親が死亡した時に相続人となるだけではなく、実親が死亡した時にも相続人となります。
特別養子縁組
特別養子縁組とは、実親との親子関係を断ち切って、新たな親子関係を作り出す制度です。
そのため、特別養子縁組をした子は実親との間では相続人とならず、養親が亡くなった場合に相続権があるだけです。
3.養子縁組の離縁とは
養子縁組とは、養子縁組をした当事者の間に法的な意味での親子関係を生じさせるものです。
そして、養子縁組により生じた法的な親子関係を解消するのが、養子縁組の離縁です。
特別養子縁組については、特別な場合に限り家庭裁判所の審判による離縁が認められているだけですが、普通養子縁組については、協議離縁や裁判離縁、調停離縁が認められています。
「協議離縁」とは、養親と養子が話し合って、離縁するというものです。当事者が合意し、届出を行うことで離縁が成立します。もっとも、養子が15歳未満の場合には、養親と養子ではなく、離縁の後に子の法定代理人となるべき者と養親との間で離縁についての協議する必要があります。
「調停離縁」は、協議ができない場合や、話し合っても離縁の合意ができない場合に、家庭裁判所に調停の申立をして離縁を求めるものです。
調停では、第三者である家事調停委員を介しての話し合いとなるので、それまで感情的な対立で解決できなかったような場合でも、比較的冷静に話が前進する場合もありますが、最終的に合意に至らなければ調停は不成立となり、調停の手続は終了となります。
この場合は、「裁判離縁」などを検討することになります。
「裁判離縁」は、裁判所から養子縁組をした当事者について離縁するという内容の判決を得ることで離縁することを言います。
裁判離縁は一定の事由がある場合に限り認められます。一定の事由とは、
- 他の一方から悪意で遺棄されたとき
- 他の一方の生死が3年以上明らかでないとき
- その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき
であり、この3つのいずれかにあたらないと離縁は認められないということになります。また、①~③のいずれかにあたる場合でも、一切の事情を考慮して縁組の継続が相当である場合には、裁判所は離縁を認めないことができます。
なお、養親と養子との間の関係が破綻するについて主として責任のある者からの離縁の請求については、判例は消極的な態度を取っているとされ、そうでない者からの請求に比べて認められにくいと言えます。
4.養子縁組と代襲相続
代襲相続とは、法定相続人が相続時に死亡している場合、その子が法定相続人の代わりに相続することをいいます。
養子に子どもがいて、養親の死亡時に養子も死亡していた場合、養子の子どもが代襲相続できるかどうかは、養子の子どもがいつ生まれたのかで変わってきます。
まず、養子縁組の前に生まれた子どもは、代襲相続人になることができません。養子縁組をしても、養親と養子の子との間には親族関係が生じないからです。
それに対し、養子縁組の後に生まれた子どもは、代襲相続人となることができます。養親と養子は養子縁組によって親族となり、その後に生まれた養子の子は養親の直系卑属となるからです。
5.養子にまつわる相続トラブルは専門家に相談を
養子縁組は、血縁関係のない人に自分の財産を相続させる方法の1つとしてよく使われる方法です。
分かりやすい例で言えば、子連れで再婚をする場合が挙げられます。女性が子供を連れて再婚したとしても、その連れ子と養父の間には親族関係がないため、そのままでは相続人にはなりません。
したがって、連れ子に相続権を与えるためには、養父と連れ子との間で養子縁組を行うことが必要です。養子にまつわる相続トラブルを回避するために、なるべく早期に弁護士などの専門家に相談されることをおすすめします。
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