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連絡がつかない相続人がいる場合、遺産分割を進めてもよいですか?

「相続人の中に連絡先がわからない人がいる」、「連絡しても無視されてしまう」など連絡がつかない相続人がいてお困りの方もいると思います。遺産分割協議は、相続人全員で行う必要がありますので、連絡がつかないからといって、一部の相続人を除いて遺産分割協議を行っても無効になってしまいます。
そのため、連絡がつかない相続人がいる場合には、相続人調査や必要な手続きを踏んだ上で、遺産分割を進めていかなければなりません。
今回は、連絡がつかない相続人がいる場合の対処法と遺産分割を放置するリスクについて、わかりやすく解説します。

1、相続人と連絡がつかないまま遺産分割を進めるのはNG

スマートフォンとボールペン

遺産分割協議を有効に成立させるためには、相続人全員で行わなければなりません。連絡がつかない相続人を除いて遺産分割協議を行ったとしても、当該遺産分割協議は無効です。
遺産分割協議が無効になれば、遺産分割協議をやり直さなければなりませんので、時間と手間がかかります。そのため、相続人と連絡がつかないからといって、そのまま遺産分割を進めるのはNGです。

 

【参考】円満に遺産分割を進めるためのポイント

2、連絡がつかない相続人がいる場合の対処法

連絡がつかない時の対処法

連絡がつかない相続人がいる場合にはどのように対処したらよいのでしょうか。連絡がつかないという状況には、「相続人の連絡先がわからない」というケースと「相続人に連絡をしても無視される」というケースの2つが考えられますので、以下ではそれぞれのケースについての対処法を紹介します。

(1)相続人の連絡先がわからない場合

相続人の連絡先がわからない場合には、以下のような対処法を検討しましょう。

①住所の調査

連絡先のわからない相続人がいる場合には、その相続人の戸籍の附票を取得してみましょう。戸籍の附票には、その人の住所の遍歴が記載されていますので、戸籍の附票をみれば最新の住所を把握することができます。
なお、戸籍の附票を取得するには、対象の相続人の本籍地の情報が必要になります。相続人調査の際に取得した被相続人の出生から死亡までの戸籍を利用すれば、対象となる相続人の本籍地の情報を把握できます。

②不在者財産管理人の選任申立て

戸籍の附票により住所を特定できたとしても、当該住所に居住していない場合には、それ以上連絡を取る手段がありません。このような場合には、不在者財産管理人の選任申立てを行うとよいでしょう。
不在者財産管理人とは、行方不明になり連絡の取れない人の財産を本人に代わって管理する人をいいます。裁判所により不在者財産管理人が選任されると、行方不明の相続人に代わり、不在者財産管理人が遺産分割協議に参加することができますので、相続人に連絡がつかなくても遺産分割を進めることが可能になります。

③失踪宣告の申立て

連絡がつかない相続人の生死がわからない状態が7年以上続いているのであれば、失踪宣告の申立ても有効な対処法になります。
失踪宣告の申立てを行い、裁判所により失踪宣告がなされると失踪宣告の対象となった人は、法律上死亡したものとみなされますので、遺産分割協議から除外することができます。ただし、失踪宣告の対象となった人に相続人がいる場合には、その相続人を遺産分割協議に参加させなければなりません。

(2)相続人に連絡をしても無視される場合

相続人の連絡先はわかるものの、相続人に連絡しても無視されている場合には、以下のような対処法を検討しましょう。

①あらゆる手段で連絡を試みる

電話やメールで連絡しても無視されてしまうという場合には、その相続人の自宅に手紙を送ってみるとよいでしょう。突然手紙が届くと、警戒されたり、困惑させる可能性もありますので、被相続人が亡くなり遺産分割協議が必要な状況を丁寧に説明してください。その際には、以下のようなポイントを押さえた内容にすることで、協力が得られやすいでしょう。

  • 遺産分割に協力しないことで生じるリスクやデメリットの説明
  • 直接会わなくても郵送のやり取りで手続きが可能であることの説明
  • このまま遺産分割の手続きに協力しないと遺産分割調停や審判の手続きが必要になることの説明
  • このような手紙も無視されるようであれば、その相続人の自宅を訪問して事情を説明してみましょう。

②遺産分割調停の申立て

上記のような手段を用いても連絡が取れず無視されてしまうという場合には、最終的に家庭裁判所に遺産分割調停の申立を行います。
遺産分割調停の申立を行うと、裁判所から相続人に対して、調停期日への参加を求める呼出状を送ってもらえます。相続人からの連絡を無視している人でも、裁判所からの呼び出しには応じてくれることもありますので、調停で話し合いがまとまる可能性があります。

③遺産分割審判

遺産分割調停は、基本的には話し合いの手続きになりますので、調停に参加しない相続人がいる場合には、遺産分割調停を進めることはできませんので、調停は不成立となります。そして、調停が不成立になると自動的に遺産分割審判の手続きに移行します。
遺産分割審判では、調停のような話し合いの手続きではなく、裁判官が一切の事情を考慮して適切な遺産分割方法を決定してくれます。審判に不参加の相続人がいたとしても、結論が出ますので、最終的には審判で解決することができます。

 

【参考】遺産分割が進まない理由や対処法について

3、遺産分割を後回しにする危険性

危険性

連絡がつかない相続人がいるからといって、遺産分割を後回しにすると、以下のようなリスクがありますので注意が必要です。

(1)不動産の活用ができない

相続財産に不動産が含まれている場合、被相続人の死亡により相続人の共有状態となります。共有不動産の売却、解体、増改築などを行うためには、共有者全員の同意が必要になりますので、連絡がつかない相続人がいると、不動産を活用するタイミングを逃してしまいます。

 

【参考】実家を売却して遺産分割する場合のポイント
【参考】農地の相続問題にお困りの方へ

(2)預貯金の払い戻しができない

被相続人の預貯金は、遺産分割後でなければ払い戻しができませんので、遺産分割を後回しにすると、預貯金を引き出せないまま放置することになります。
相続法改正により2019年7月から預貯金の仮払い制度が導入されましたが、仮払いできる金額には上限が設けられていますので、自身の相続分に応じた払い戻しを受けるには、遺産分割を成立させる必要があります。

(3)相続税申告で各種制度や特例の利用ができなくなる

相続税申告は、相続開始を知ったときから10か月以内に行う必要があります。期限内に申告をしないと、相続税の配偶者控除や小規模宅地等の特例といった制度や特例が利用できなくなり、相続税の負担が大きくなるといったデメリットがあります。

 

【参考】相続財産について

4、連絡がつかない相続人がいるときは弁護士に相談を

弁護士集合写真

連絡がつかない相続人がいるときは、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

(1)弁護士が窓口になることで話し合いが進む可能性がある

相続人同士が疎遠なケースでは、突然よくわからない人から連絡が来ても、警戒されるなどの理由でスムーズに遺産分割を進めることができません。
しかし、弁護士が窓口となって対応すれば、相手も安心して話し合いに参加できますので、連絡がつかない相続人の協力が得られる可能性が高くなります。

(2)裁判所への申立てを一任できる

相続人と連絡がつかない状況によっては、裁判所に不在者財産管理人の選任申立て、失踪宣告の申立て、遺産分割調停の申立てなどの手続きを行わなければなりません。
不慣れな方ではこれらの手続きを適切に行うのは困難ですので、専門家である弁護士に任せるのが安心です。弁護士に依頼をすれば、ほぼすべての手続きを弁護士に任せることができますので、相続手続きの負担を大幅に軽減することができます。

 

【参考】遺産分割を弁護士に依頼するメリット

 

5、まとめ

相続人と連絡がつかない場合、そのままでは遺産分割の手続きを進めることができません。状況によっては裁判所への申立てが必要になることもありますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
相続人と連絡が取れずにお困りの方は、山本総合法律事務所までお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

代表弁護士 山本哲也

弁護士法人山本総合法律事務所

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