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実家の遺品整理はどう進める?重要書類の見つけ方と相続手続への備え
- 執筆者弁護士 山本哲也
親が亡くなった後、実家に残された遺品の整理は、心の整理だけでなく相続手続きにも大きく関わる重要な作業です。「どこから手をつければよいか分からない」「財産や契約に関わる書類が見つかるか不安」といった声も少なくありません。
この記事では、実家の遺品整理を行う目的や注意点、スムーズに進めるための手順を、相続に関連する視点から分かりやすく解説します。
目次
遺品整理を行うのは相続人の役目
遺品とは、故人が生前使っていたすべての所有物を指し、法律上は相続財産として相続人に引き継がれます。家財道具、現金、不動産書類なども含まれ、誰かが勝手に処分することはできません。
遠方に住んでいたり、忙しかったりする相続人が、知人や近所の人に片付けを任せたいと考えることもあるでしょう。しかし、他人が処分を行うと、後々のトラブルや誤処分の原因になることがあります。遺品の整理は、可能な限り相続人が自ら行うか、業者に正式に依頼する形をとりましょう。
整理を始める前に知っておくべき注意点
相続放棄を検討しているなら慎重に
遺品を整理する前に、「相続を放棄するかもしれない」と考えている場合は要注意です。相続人が遺産の一部を処分すると、法律上「相続を受け入れた」と判断されることがあり、相続放棄が認められなくなる可能性があります。
相続するかどうかを判断する期間(熟慮期間)は、相続の開始を知ってから3ヶ月以内です。その間は不用意に遺品に手をつけず、財産の状況を冷静に確認しましょう。
遺品整理を行う目的とは?
遺品整理には以下のような重要な意味があります。
- 相続財産を把握する
- 契約や税金に関わる書類を確認する
- 不動産や家屋の管理・売却に備える
中でも、相続税の申告や不動産の売却など、法的手続に関わる書類を見つけることは非常に重要です。
相続財産の具体例
プラスの財産:現金、預貯金、不動産、有価証券、貴金属、保険金受取権など
マイナスの財産:借金、ローン、税金の未納分、医療費の未払いなど
実家を放置するとどうなる?起こりうるリスク
空き家のまま放置すると…
遺品整理を後回しにして実家を放置しておくと、以下のようなリスクがあります。
- 固定資産税を支払い続ける必要がある
- 不動産の価値が下がる
- 特定空き家に指定され、税負担が重くなる
特定空き家に認定されると、税金が最大6倍になることもあり、適切な管理や整理を怠ると大きな損失につながります。
遺品整理がつらく感じるときの対処法
遺品の整理は、単なる片付けとは違い、感情的にも負担の大きい作業です。以下のような不安を感じる方も少なくありません。
- 忙しくて時間が取れない
- 故人との思い出が蘇り、気持ちがつらい
- 遺品に高い価値があり相続人同士で揉めないか不安
解決策
- 業者に依頼:人手や時間がない場合は、信頼できる専門業者に依頼することでスムーズに進められます。
- 気持ちの整理ができてから始める:四十九日などの法要を終えたあとにスタートするのもおすすめです。
- 遺言書の有無を確認:財産の配分が明記されていればトラブル防止になります。
実家の遺品整理をスムーズに進めるためのステップ
Step1:スケジュールを決める
「いつまでに」「誰と」「どこから」始めるかを具体的に決めておきましょう。
Step2:必要な道具をそろえる
ゴミ袋、段ボール、マスク、手袋、工具類などを事前に用意すると作業がスムーズです。
Step3:重要書類の仕分け
以下の書類は誤って処分しないよう、先に確認・保管しておきます。
- 遺言書
- 通帳、印鑑、保険証書
- 権利証、不動産売買契約書
- 年金手帳、本人確認書類など
Step4:不用品の処分とリサイクル
家電や家具などの中には、法令上リサイクルが必要な物もあります。自治体のルールを確認しながら処分しましょう。
Step5:業者への依頼も検討
整理が困難な場合は、数社に見積もりを依頼して検討するとよいでしょう。費用だけでなく、対応の丁寧さや信頼性も確認することが大切です。
相続と遺品整理に不安がある場合は専門家に相談を
相続に関する手続きや税金、家の売却などを含めた一連の対応には法律や税の専門知識が必要になることもあります。
「自分でやるのは不安」「何をすればよいか分からない」という場合は、弁護士など相続の専門家に相談することで、精神的な負担を大きく軽減できます。
まとめ
実家の遺品整理は、感情的な負担も大きく、手続きも複雑ですが、相続に必要な一歩として避けては通れない作業です。放置することによるデメリットを避けるためにも、早めに準備を進めましょう。
不安がある場合や迷ったときは、専門家に相談することで安心して遺品整理・相続手続きを進められます。