預金使い込みの証拠の集め方

 

亡くなった親の預金を同居している兄弟の1人が使い込んでいた場合など、他の相続人は使い込んだ相続人へ取り戻しの請求が可能です。

ただしそのためには「証拠」を集めなければなりません。証拠がなければ、相手は「使い込んでいない」と主張するでしょうし、裁判をしても望む結果にならない可能性があります。

 

今回は預金を使い込まれたときの「証拠の集め方」を弁護士が解説します。

 

1.証拠がないと預金を取り戻せない

 

使い込まれた預金を取り戻すには「証拠」が必要です。

 

1-1.訴訟で預金を取り戻すには証拠が必要

1つには、預金使い込みが発覚しても、本人が使い込みを認めるケースは少ないからです。

本人が認めないなら「訴訟」を起こし、裁判所に使い込みを認定してもらうしかありません。

ただ裁判になると、取り戻しを請求する側が使い込みの事実を証明する必要があります。相手には立証責任がないので、ただ「使い込んでいない」と否定していれば良いだけです。請求側が使い込みを証明できなければ、請求は棄却されて使いこまれた預金を取り戻せません。

 

裁判で勝つために証拠を集める必要があります。

 

1-2.証拠があれば裁判せずに取り戻せる可能性も高くなる

預金使い込みを証明できる明確な証拠があれば、相手も否定しにくくなるでしょう。

「裁判しても負ける」と考えるので、訴訟前に話し合いで解決できる可能性も高くなります。

証拠を揃えて相手に提示すれば、裁判をしなくてもスピーディに預金を取り戻しやすくなるでしょう。

 

このように、使い込まれた預金を取り戻すには「証拠が必須」といえます。本格的に交渉を始める前に、まずは証拠を集めましょう。

 

2.出金と金額を確認する証拠

 

預金の使い込みを証明するには、「出金された事実」と「時期」「金額」を証明しなければなりません。

 

2-1.銀行預金の取引履歴、通帳

そのためには銀行預金の取引履歴や通帳が必要です。通帳や取引履歴には、「いついくらが出金されたのか、あるいは振込送金されたのか」が記載されています。

親が通常自分で行うことのない高額な出金や同居の相続人宛の送金があったら、それだけで濃厚な使い込みの証拠となるでしょう。連日、限度額いっぱいの出金が続くケースなどでも使い込みを証明しやすくなります。

 

また「取引年月日」も重要なファクターです。親が認知症などにかかって自分で出金できない状態になった後に出金や振込が行われていたら、裁判でも預金使い込みの事実が認定されやすくなるでしょう。

 

2-2.取引履歴を取得する方法

通帳は同居の相続人本人が管理しているケースが多いので、開示させるのは容易ではありません。

開示を受けられないなら金融機関で「取引明細書(取引履歴)」を取得しましょう。

取引明細書とは、一定期間内の取引の明細が記載されている記録です。期間を指定して金融機関に申請すれば、発行を受けられます。

 

申請方法

名義人の死後であれば、「相続人」からの依頼によって取引履歴を発行してもらえるので、金融機関へ行って申請します。

名義人との関係を示す戸籍謄本類や身分証明書、印鑑などが必要なので、事前に必要書類を確認しておくとスムーズです。

 

3.本人が出金できる状況でなかった事実を示す証拠

 

預金から出金や振込が行われていても、使い込んだ相続人は「親が自分で出金した、振り込んだ」と反論してくるケースが多々あります。

そういった反論を封じるため「親が自分で出金できる状況ではなかった事実」を証明しなければなりません。

以下のような証拠を集めましょう。

 

3-1.市町村での介護認定に関する記録

親が亡くなる前、介護認定を受けていた場合にはその記録が証拠となります。要介護度が高くなり自分で動けない状態になっていたら、通常は自分で出金や振込をできなくなるからです。

要介護認定を受けたときの証明書が手元にあれば証拠に使えます。

また介護認定に関する記録が市区町村役場に保管されています。

  • 認定審査会の資料
  • 認定調査票
  • 主治医の意見書

相続人が請求すれば開示を受けられる自治体もあれば、裁判にならないと開示を受けられない自治体もあります。

 

3-2.介護日誌や介護に関する記録

介護施設や在宅で介護サービスを受けていた場合には、介護事業所で介護記録が保管されています。介護日誌やケアプラン、報告書などの資料開示を受けましょう。

相続人が請求しても開示してもらえない場合、弁護士が「23条照会」をすれば開示に応じてもらえる可能性があります。

最終的には訴訟を起こし、裁判所から職権調査嘱託をすればほとんどのケースで開示されるので、困ったときにはご相談ください。

 

3-3.医療機関で保管されている診療記録

親が入通院して病院で治療を受けていた場合には、医療機関で診療記録が保管されています。

カルテを分析すると、時系列で治療内容や投与していた薬の内容などがわかります。たとえば診療記録から「重度の認知症」になっていた事実がわかれば、親自身が出金や振込をするのは難しいと証明しやすくなるでしょう。

預金使い込みが発覚したら、入通院先の病院へカルテや看護記録などのすべての証拠開示を請求します。

 

医療機関の記録は、相続人が病院に申請すれば開示してもらえるケースが多数です。どうしても開示してもらえない場合、弁護士や裁判所から照会すれば開示の可能性が高まります。

 

4.証拠集めの手段

 

預金使い込みの証拠収集方法としては、以下のような手段があります。

 

4-1.相続人が開示請求する

1つ目は、相続人自身が各機関へ開示請求する方法です。

  • 預金取引履歴は金融機関
  • 介護認定に関する記録は自治体
  • 介護に関する記録は介護事業
  • 病状や治療に関する記録は医療機関

相続人である事実を示す戸籍謄本類を用意して、上記の機関へ連絡・申請しましょう。

 

4-2.23条照会(弁護士会照会)をする

相続人が請求しても「個人情報保護」などを理由に拒絶される場合があります。その場合、弁護士に使い込みの取り戻しを依頼すれば、「23条照会(弁護士会照会)」という手段をとることも可能です。

23条照会とは、弁護士が職権でさまざまな事項を調査できる制度です。照会された機関には回答義務があります。

病院への照会を断られた場合には23条照会でカルテを取り寄せられるケースもあります。

 

4-3.職権調査嘱託をする

弁護士が照会しても、照会先が守秘義務等を理由に情報を開示しない場合もあります。そのような時は裁判所に申し立てて「職権調査嘱託」を利用します。

職権調査嘱託とは、調査が必要な事項について裁判所が各機関へ情報照会する手続きです。裁判所からの照会であればほとんどの機関が開示に応じるので、証拠を入手できます。

ただ職権調査嘱託を利用するには、まず裁判を起こし、裁判上の手続きとして行うこととなります。

 

5.預金使い込みが発覚したら弁護士へ相談を

 

預金使い込みの証拠収集は、自力で対応できる部分もあれば、中には専門家の力を借りるべき部分もあります。

預金使い込みトラブルは弁護士に依頼すると、証拠の確保から取り戻しの裁判までスムーズに進めることができます。

使い込みが発覚しトラブルを抱えておられる方は、なるべく早めに一度ご相談ください。

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