相続人の一人にすべての財産を相続させるという遺言書が…他の相続人は財産をもらえない?

更新日:2023/06/14

群馬県高崎市の弁護士がお答えします。

 

相続人のうちの一部にすべての財産を相続させる遺言がある場合、有効な手続きをとれば遺産の一部を取得できる可能性があります。

 

以下で詳しく解説します。

 

1.遺留分侵害請求(遺留分減殺請求)と遺言無効確認

相続人のうちの一部にすべての財産を相続させるという遺言があった場合、他の相続人は遺産を受け取ることができないのでしょうか?

遺留分侵害請求」を行えば遺留分に応じた遺産を取得できますし、遺言の効力に争いがある場合には「遺言無効確認」により遺言自体が無効になる可能性もあります。

 

2.遺留分侵害請求とは

遺留分とは?

遺留分侵害請求について説明する前に、まずはあまり耳にする事のない「遺留分」について解説します。

遺留分制度とは、兄弟姉妹を除く相続人に対して、被相続人(亡くなった人)が所有していた相続財産のうち一定割合を保証する制度です。

本来自身の財産を誰にどのように与えるかは、被相続人の自由のはずです。ただ、相続人中に相続財産を全く受け取れない人がいる場合、その相続人のこれからの生活が困難となってしまうおそれがあります。

そこで、そのような事態などを防ぐために、法律上相続人に最低限の財産の相続を確保する権利を与えたものが遺留分なのです。

 

遺留分侵害請求とは?

遺留分侵害請求とは、自身の遺留分(最低限の財産を確保する権利)を侵害されている相続人が、遺留分を侵害している他の相続人などに対して、侵害額の請求をすることを指します。

以前は「遺留分減殺請求」と呼ばれていましたが、民法の改正により「遺留分侵害請求」に変更されました。

 

遺留分が認められる人

遺留分が認められるのは次の人です。

  • 配偶者
  • 子ども、代襲相続する孫、ひ孫などの直系卑属
  • 親、祖父母、曾祖父母などの直系卑属

それぞれの遺留分割合について詳しくはこちらからご覧ください。

なお、上記のように被相続人の兄弟姉妹には遺留分はありません。兄弟姉妹が相続人となるような場合に他者が相続財産をすべて相続する旨の遺言があっても、兄弟姉妹は遺留分侵害請求ができないので注意してください。

 

遺留分の算定方法

各相続人が取得することのできる遺留分の額は、遺産の総額に上記の遺留分割合と個々の相続人の法定相続分をかけ合わせて算出します。ただ遺留分の額を算出するには、不動産や預金、生前贈与や特別受益等についてもきちんと調査をして遺産の総額を確定させる必要があります。これらの調査を個人で行うことは、困難を伴いますから弁護士などの専門家に依頼することも検討した方がいいでしょう。

 

遺留分侵害請求の期限

なお、遺留分侵害請求は、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与・遺贈があったときから1年、また相続の開始の時から10年経過した場合することができなくなるので注意してください。

 

3.遺言無効確認とは

遺言が法律的に無効であることを確認してもらう手続き

遺言無効確認とは、例えば被相続人が遺言を作成した当時認知症などにより判断能力を欠いていたなどの事情があり、相続人間で遺言の効力に争いがあるような場合に、その遺言が法律的に無効であることを裁判所に確認してもらうための手続をいいます。

遺言の無効が確認された場合、その遺言の効力は無効になり、遺言に基づく遺産の分割はなされないことになります。

 

遺言無効確認を行うには?

遺言の有効性については、自書による遺言かどうかが争われる場合には筆跡鑑定を行ったり、遺言者の意思能力が問題となる場合には、遺言者の生前の医療記録の調査など行ったりする必要が生じる場合もあります。

また、遺言無効確認の手続は、調停の申立をする必要があり、調停が不調に終わってはじめて訴訟を提起することができます。手続により、遺言の無効が確認されて初めて遺産分割の手続に進むことになります。そのため、遺言無効確認の手続をとった場合には、相当な時間と労力がかかると考えた方がいいでしょう。

 

4.遺言書の内容に納得できなかったら専門家へ相談を

 以上で述べたように、遺言書が「特定の相続人にすべてを相続させる」という内容であったとしても、遺言無効確認や遺留分減殺請求を行うことで、財産の一部を取得できる可能性があります。

 特に、遺留分侵害請求は上記のような立場になってしまった場合に、多くの方がとられている手段です。

 ただし、遺留分の算定方法や請求の手段等は専門的な知識がないと判断が難しい点も多いため、まずは一度、相続問題に詳しい専門家に相談されることをおすすめします。

 

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