遺留分を請求するには

 

遺言や贈与によって遺留分を侵害されたら、侵害者へ「遺留分侵害額請求」ができます。

 

遺留分侵害額請求とは、侵害された遺留分に相当するお金を払ってもらうための請求です。

「相続開始」と「遺留分を侵害する贈与または遺贈があったこと」を知ったときから1年以内に行使しないと権利が消滅してしまうので、早めに対応しましょう。

 

今回は遺留分を請求する具体的な方法について、弁護士が解説します。

 

1.遺留分侵害額請求とは

遺留分とは、遺産の最低限の取り分のことです。

「特定の相続人に遺産の大部分を譲る」というような遺言書があったために、遺留分を侵害されたら、侵害された相続人は侵害者へ遺留分の取り戻しを請求できます。

 

1-1.遺留分に応じたお金の支払いを請求できる

遺留分を請求する時は、基本的に「お金による清算」を求めます。つまり不動産などの遺産そのものの引き渡しを求めるのではなく、遺留分侵害額に対応するお金の支払いを請求するのです。

このように、遺留分を侵害された人が遺留分を侵害した人に対して遺留分に相当するお金を払ってもらう権利を「遺留分侵害額請求権」といいます。

 

1-2.遺留分を請求できる人

遺留分を請求できるのは、「兄弟姉妹以外の法定相続人」です。

遺留分が認められる人や割合について詳しくはこちら

 

1-3.遺留分侵害額請求と遺留分減殺請求の違い

遺留分侵害額請求権は、民法改正によって新たに作られた権利です。

従来、相続人が遺留分の返還請求を行うときには「遺留分減殺請求」をする必要がありました。遺留分減殺請求権は遺留分の請求をするとき「遺産そのもの」を取り戻す権利です。

しかし遺留分減殺請求を行うと遺産が共有状態になるなど不都合が大きかったので、新しい民法では金銭的な清算を求める権利に変わりました。

 

1-4.2019年6月30日までに発生した相続に関して

遺留分を侵害されたら、遺言で遺贈を受けた人や贈与を受けた人に対し「遺留分侵害額請求」を行って金銭請求をしましょう。

ただし2019年6月30日までに発生した相続の場合には旧民法が適用されるので「遺留分減殺請求」を行って遺産そのものの返還を求める必要があります。

 

2.遺留分侵害額請求権の期限

 

遺留分侵害額請求には期限があるので注意が必要です。

 

遺留分が請求可能なのは1年以内

まず「相続開始」と「遺留分を侵害する遺言や贈与」を知ってから「1年以内」に請求しないと、遺留分侵害額請求権が時効にかかってしまいます。

遺留分を返してほしいなら必ず1年以内に相手に請求をしましょう。

 

相続開始後10年経つと権利自体が消滅する

また相続開始、遺言や贈与を知らなくても「相続開始後10年」が経過すると権利が消滅します。

こちらは「除斥期間」と考えられているので、途中で請求をしても止められません。

 

3.遺留分侵害額請求の手順

 

遺留分侵害額請求を行うときには、以下のように進めましょう。

 

3-1.相手に遺留分侵害額請求の通知をする

まずは受贈者や受遺者などの「遺留分侵害者」に対し、遺留分侵害額請求の通知をしましょう。

 

相手が親しい親族で時効まで期間があるケース

遺留分の時効までに期間があり、相手が親しい親族で話し合いによって払ってくれそうであれば、まずは通常の書面(お手紙)などで意思を伝えてみるのが良いでしょう。いきなり内容証明郵便を送ると角が立つ可能性があります。

 

時効が間近なケースでは内容証明郵便を利用

一方、時効が間近な場合には「内容証明郵便」を使って「必ず時効成立前に遺留分侵害額請求をした」証拠を残しましょう。内容証明郵便を使うと郵便局が確定日付を入れてくれて手元に控えも残るので、確実に時効期間内に遺留分侵害額請求を行った証拠となり、時効による権利消滅を防げます。

いきなり内容証明郵便を送ると相手の気分を害しそうな場合、断りを入れてから発送すると良いでしょう。

 

相手と疎遠、仲が悪いケース

相手と疎遠または仲が悪く、通常の手紙では払ってくれそうもない場合には当初から内容証明郵便を送っても問題ありません。

 

3-2.話し合う

相手に遺留分侵害額請求の通知をしたら、いくらの金額をいつまでに支払ってもらうのか、話し合って決めましょう。

相手に支払い能力がない場合、分割払いを申し入れられる可能性もあります。状況によっては分割払いを認めるべきケースも考えられるので、合理的な支払方法を決定しましょう。

 

3-3.合意書を作成して支払を受ける

お互いに遺留分侵害額の金額や支払方法について合意できたら「遺留分侵害額の支払いに関する合意書」を作成しましょう。口約束では払われないおそれがあるので、必ず書面化すべきです。

特に分割払いを認める場合には「公正証書」にするようお勧めします。公正証書を作成しておけば、相手が支払わないときに強制執行(差押え)によって回収できるからです。公証役場に申込みをして公証人に書面化してもらいましょう。

 

3-4.合意できない場合「遺留分侵害額の請求調停」を申し立てる

話し合っても合意できない場合には、家庭裁判所で「遺留分侵害額の請求調停」を申し立てましょう。

調停では、調停委員会に間に入ってもらって遺留分侵害額の支払い方法を話し合えます。

合意ができたら調停が成立し、決まった内容通りに相手から遺留分を払ってもらえます。相手が約束を破る場合、差押えも可能です。

 

3-5.調停が不成立になったら「遺留分侵害額請求訴訟」を提起する

調停でも合意できずに「不成立」になってしまったら、地方裁判所で「遺留分侵害額請求訴訟」を提起しましょう。

遺留分侵害額請求訴訟を起こすと、裁判官が遺留分侵害額の金額や支払方法を決めて相手に対し、判決で支払い命令を下します。

相手が判決に従わない場合、相手の預貯金などの資産を差し押さえて不払い金を回収できます。

 

4.遺留分侵害額請求のポイント

  

4-1.時効に注意

まずは時効に注意が必要です。遺留分権利者の方は「遺留分を請求するかどうか」迷われるケースが多々あります。しかし遺留分の時効は1年しかないため、先延ばしにしている間に権利が失われてしまいます。

後悔しないため、早めに行動しましょう。

どうしたら良いか悩んでしまう場合、弁護士までご相談ください。

 

4-2.冷静に対応する

遺留分侵害額請求をすると、相手との間で大きなトラブルになる可能性も否定できません。親族同士の争いになると、お互いに感情的になって収集がつかなくなりがちです。

スムーズかつ有利に解決するため、感情に流されず意識して冷静に対応しましょう。

弁護士に依頼すればあなたの代理人として間に入ってくれますので、直接やり取りをする必要はありません。

 

4-3.弁護士に相談する

遺留分侵害額請求を有利に進めるには、弁護士によるサポートが重要です。

弁護士が対応すればみすみす時効を成立させてしまうこともありませんし、相手との交渉も有利に進められます。

調停や訴訟も安心して任せられるでしょう。

 

5.まとめ

 

遺留分は遺産の最低限の取り分のことで、兄弟姉妹以外の法定相続人であれば請求することができます。

遺留分は取り分に応じた金額を請求することができ、これを「遺留分侵害請求」といいます。

遺留分侵害請求には期限があり、相続開始時と遺留分が侵害する行為があった事を知った時から1年以内です。

まずは話し合いをし、決着がつかない場合には調停や訴訟に移行することとなります。

遺留分侵害請求には法律的な知識や交渉のテクニックが必要です。なるべく早めに専門家に相談されることをおすすめします。

当事務所では遺留分侵害額請求事件の解決実績も高く、親身な対応を心がけております。お悩みの方はお早めにご相談ください。

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