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遺言書が出てきた!その場で開封してはいけない理由と検認の必要性

遺言書が出てきた!その場で開封してはいけない理由と遺言の検認

亡くなった方が作成した遺言書が見つかると、内容が気になって「開封したい」と考える方もいらっしゃるでしょう。

しかし、遺言書を勝手に開封してはいけません。

 

故人が自分だけで作成した遺言書の場合、裁判所において「検認」という手続きが必要です。

検認が要求されているのは、遺言の改ざんを防ぐためです。

 

万が一すでに開封してしまったケースでも、それだけで遺言が無効になるわけではありません。

すぐに手続きをするようにしましょう。

 

本記事では、遺言書が出てきたときに開封してはいけない理由や、検認手続きの流れ、すでに開封した場合の対処法などを解説しています。

故人が残した遺言書を見つけた方は、ぜひ最後までお読みください。

 

遺言書が出てきたら開封してはいけない

トラブル亡くなった人の遺品を整理しているときなどに、遺言書が見つかる場合があります。

 

生前に遺言の存在と保管場所を知らされているケースもあるでしょう。遺言書が目の前にあったら、内容が気になってすぐに開封したくなるかもしれません。

しかし、遺言書を安易に開封してはなりません。

 

故人が自分だけで作成した遺言書(自筆証書遺言)の場合、家庭裁判所での「検認」手続きが必要です。

検認をせずに勝手に開封してしまうと、ペナルティが発生する可能性があります。

 

検認しないと今後の遺産相続が進められないうえに、相続人同士でのトラブルにもなりやすいでしょう。

 

【参考】高崎・前橋で遺産分割でお困りの方へ

遺言書の検認とは?

遺言書の検認とは?

検認手続とは?

検認とは、裁判所で遺言の中身を確認してもらう手続きです。

法律上、遺言の保管を頼まれていた人や遺言を発見した相続人は、家庭裁判所に検認手続きを請求する義務があります(民法1004条1項)。

検認の目的

法律で検認手続きが求められている理由は、主に次の3点が挙げられます。

  • 遺言書の改ざん・破棄・隠匿を防ぐ
  • 相続人全員に遺言の存在を知らせる
  • 手続き記録として残すことで将来の紛争を予防する

手続の流れ

手続きは、相続人全員に通知をしたうえで、集まった相続人が立ち会い、裁判所において遺言書を開封する形式で行われます。

裁判所によって遺言書の内容や状態などが記録されるため、その後の改ざんや破棄を防ぐことができます。

自筆証書遺言は検認が必要

遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」がありますが、検認が必要になるのは自筆証書遺言の場合です。

故人自身が手書きにより作成する自筆証書遺言は、事後的に改ざんされるリスクが高いため、検認手続きが要求されています。

自筆証書遺言書を見つけたら、開封せずに検認手続きをしましょう。

なお、もとから封がされていなくても、自筆証書遺言の場合には検認が必要です。

検認が不要なケース

反対に公正証書遺言は、公証人が関与して作成され公証役場でも保管されるため、偽造の心配はありません。

そのため、検認手続きは不要です(民法1004条2項)。

同様の理由で、法務局に保管されている自筆証書遺言についても検認は不要とされています。

 

【参考】遺言書だけでは足りない?遺言執行者の必要性

遺言書を見つけたらすべきことの流れ

自筆証書遺言を見つけたら、次のような流れで検認手続を行いましょう。

  1. 遺言書を確認(検認が必要な形式かどうか)
  2. 家庭裁判所へ申立て
  3. 相続人全員に通知
  4. 裁判所にて開封・内容確認(相続人立会い)
  5. 検認済証明書の取得

それぞれのステップについて、以下で詳しく解説します。

ステップ①:遺言書を確認(検認が必要な形式かどうか)

まずは検認が必要である自筆証書遺言であるかどうかを判断しましょう。

下記を参考に自筆証書遺言なのか、公正証書遺言であるかを確認します。

項目 自筆証書遺言 公正証書遺言
作成者 本人が手書きで作成 公証人の関与のもとで作成
形式 全文・日付・署名・押印が手書き(ただし、財産目録はPCで作成してもよい) 公証人による文章で、原本は公証役場に保管
見た目の特徴 手書き文字、封筒に「遺言書」などと記載されていることが多い 印字された文書で「○○公証役場」と明記されている
検認の要否 原則として必要(法務局保管分を除く) 不要
保管場所の例 自宅や貸金庫など 公証役場、または本人が保管用謄本を所持

見分けるポイントとしては次の通りです。

  • 手書きかどうか:手書きなら自筆証書遺言、印字されていて「○○公証役場」等の記載があれば公正証書遺言。
  • 封筒の有無・状態:封筒入りで封印されていれば自筆証書遺言の可能性が高い(開封厳禁)。
  • 文末の記載:公正証書遺言には「公証人 ○○」といった記載がある。

自筆証書遺言の可能性が高い場合には、検認手続きに進みます。

 

【参考】遺言の種類と特徴

ステップ②:家庭裁判所へ申立て

必要書類を用意して裁判所に申立てをします。

申立先は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

たとえば、亡くなった方が高崎市に住んでいたときは、前橋家庭裁判所高崎支部になります。

各地を管轄する家庭裁判所は下記より検索できます。

 

【参考】裁判所の管轄区域(裁判所)

申立する人

検認の申立を行うのは遺言書を発見した相続人、もしくは遺言書の保管者です。

検認の申立てに必要な書類

検認申立に必要な書類は以下の通りです。

  • 申立書(書式は裁判所ホームページから入手可能)
  • 遺言者の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本(相続人以外の戸籍謄本も必要な場合あり)

【参考】相続人調査や戸籍の収集方法

検認申立の費用

検認申立の費用としては、収入印紙800円分(1通につき)と、連絡用の郵便切手代がかかります。

検認手続後に検認済証明書の申請を行う場合はさらに収入印紙150円分が必要です。

ステップ③:相続人全員に通知

家庭裁判所に検認の申立てを行った後は、検認手続の日程が決まり、裁判所から相続人全員に通知されます。

ステップ④:裁判所にて開封・内容確認(相続人立会い)

当日は、裁判所において、相続人立会いのもと遺言書が開封され、内容等が記録されます。相続人全員が出席する必要はありませんが、申立人は出席してください。

遺言書や印鑑など、裁判所から指示された物を忘れないようにしましょう。

ステップ⑤:検認済証明書の取得

手続きが終わったら、検認済証明書を申請してください。

遺言に基づいて各種相続手続きを進める際に必要になります。

遺言書を開封してしまったら

遺言書を開封してしまったら

開封してしまってもそれだけでは無効にならない

既に遺言書を開封してしまったとしても、開封したことをもって遺言が無効になるわけではありません。

すぐに検認手続きを行えば、遺言としての効力は失われません。

開封に関するペナルティ

検認が必要であるにもかかわらず手続きを怠った場合や開封をした場合には「5万円以下の過料」というペナルティが用意されています(民法1005条)。

ただし、たしかにペナルティは規定されていますが、単にうっかり開封しただけで支払いを命じられるとは考え難いです。

絶対にしてはいけない行為

絶対にしてはいけないのは、遺言の改ざん・隠匿(隠すこと)・破棄といった行為です。

これらは相続欠格事由(民法891条)に該当し、相続人としての資格を失うだけでなく、刑法上の犯罪(私文書偽造・毀棄罪など)に問われるおそれもあります。

相続人の間でトラブルになるリスクも高いでしょう。

 

たとえ開封した遺言の内容がご自身にとって不利であったとしても、決してごまかそうとしてはなりません。

早めに裁判所に検認の申立てをするようにしてください。

遺言の検認は弁護士にご相談ください

弁護士集合写真

ここまで、遺言書を開封してはいけない理由や発見した際にすべきこと、すでに開封してしまった場合の対処法などを解説してきました。

遺言書の改ざんを防ぐために、自筆証書遺言の場合には裁判所での検認手続きが法律で要求されています。

遺言を発見した際には、必要書類を集めたうえで早めに裁判所に申立てをするようにしてください。

たとえ既に開封してしまったとしても、ごまかそうとせずに検認手続きを行いましょう。

 

遺言書を発見した方は、弁護士法人山本総合法律事務所までご相談ください。

当事務所は、群馬県内でも規模の大きな弁護士事務所のひとつです。

群馬・高崎に密着して、相続に関する数多くの相談を受けて参りました。

ご相談いただければ、検認手続きの流れなど今後の対応についてアドバイスいたします。

弁護士には、裁判所への検認の申立てを依頼できるだけでなく、その後の遺産分割手続きまで任せられます。

遺言内容によっては相続人の間でトラブルが発生する可能性もありますが、弁護士がついていれば安心です。

「遺言書が見つかったがどうすればいいのか」「遺言書を開封してしまった」などとお困りの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

 

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この記事を書いた人

代表弁護士 山本哲也

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