公開日
最終更新日

遺言書が無効になるケースがある?遺言無効を訴える方法

遺言書が無効になるケースがある?遺言無効を訴える方法
遺言書は、被相続人が自らの意思で財産の分配や相続方法を定める重要な文書です。

しかし、すべての遺言書が法的に有効と認められるわけではありません。

形式の不備や内容の問題、さらには作成時の被相続人の判断能力に疑義がある場合などには、遺言書が無効とされる可能性があります。

今回は、「遺言書が無効になるケース」と、「無効を主張する方法」、さらには「遺言の無効を主張された側の対応」など、遺言に関してよくある疑問やトラブルについて、詳しく解説します。

 

遺言が無効になるケースとは

不安そうな顔でペンを持つ男性

遺言書には法律上の厳格な要件が定められており、これに反する場合には遺言が無効とされる可能性があります。主なケースは次のとおりです。

法律で定められた形式に違反している場合

遺言書は、その形式によって、主に、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があり、それぞれに厳密なルールがあります。

例えば、自筆証書遺言の場合、全文を本人が自筆し、日付と氏名を記入して押印する必要があります。

これらの要件を満たしていない場合は、形式的に無効とされる可能性が高くなります。

遺言能力がなかったと認められる場合

遺言書を作成するには、遺言者が「遺言能力」、つまり判断能力を有している必要があります。

認知症などの病状が進行しており、遺言内容を理解・判断する能力が欠けていたと認められる場合には、たとえ遺言の形式が整っていても無効とされる可能性があります。

詐欺や強迫によって作成された場合

例えば、誰かに脅されたり、騙されたりして遺言書を作成した場合、民法の規定により遺言は無効となります。

また、高齢の方が介護者などから不当に影響を受けた状況下で遺言書を作成した場合にも、後に遺言の有効性が争われることがあります。

遺言の内容が公序良俗に反している場合

例えば、「○○が結婚しなければ財産を相続させない」など、法的に許されない条件を付している遺言は、その条件部分や、場合によっては遺言全体が無効と判断されることがあります。

遺言の無効を主張したい場合にできること

遺言の無効を主張したい場合にできること

「その遺言書には納得できない」、「どう考えても不自然だ」という場合には、以下のように法的な手段により遺言の無効を主張することが可能です。

家庭裁判所に遺言無効確認の訴えを提起する

遺言が無効であることを法的に認めてもらうためには、家庭裁判所に対して「遺言無効確認の訴え」を提起するのが一般的です。

この訴訟は、遺言の内容に異議を唱える相続人などが原告となり、遺言の有効性を争う手続きです。

訴えを起こすにあたっては、例えば、遺言者の認知症の程度や筆跡の違いなど、具体的な無効の理由を証拠に基づいて主張する必要があります。

遺産分割調停・審判の中で無効を主張することも可能

遺言が存在していても、相続人間で遺産分割調停・審判を行うことはできます。

その手続きの中で、「そもそも遺言が無効だ」と主張し、遺言の効力を争点にすることも可能です。

ただし、調停で遺言の効力が争われると、調停の手続の中で解決をすることは難しく、最終的には審判や訴訟へ移行することが多いです。

専門家による筆跡鑑定や医師の診断書などの証拠収集が重要

法的な手続きにおいて遺言が偽造された可能性を主張する場合や、遺言能力の有無を争う場合には、筆跡鑑定や医師の診断記録などが重要な証拠となります。

証拠が不十分なまま遺言が無効であることを主張しても、無効と認められる可能性は低いため、弁護士のサポートのもとで慎重に準備することが大切です。

遺言が無効だと言われたらできること

遺言が無効だと言われたらできること

反対に、自分が受け取る予定だった遺産について、他の相続人から「その遺言は無効だ」と言われた場合にはどうすればよいのでしょうか。

冷静に相手の主張の根拠を確認する

遺言の無効を主張された場合には、決して感情的にならず、最初に、相手が何を理由に無効だと主張しているのかを確認することが重要です。

遺言書の形式に問題があると言っているのか、遺言能力に疑問があると主張しているのか、何らかの不正があったとされているのかなど、相手の主張を具体的に把握することが必要です。

公正証書遺言であれば有効と判断される可能性は比較的高い

公正証書遺言は、公証人の立ち会いのもとで作成されるため、本人確認はもちろんのこと、意思能力についても一定の確認がなされます。

そのため、裁判で無効とされる可能性は比較的低く、有効と認められることが多いといえます。

弁護士に相談して法的手段に備えることが必要

相手から訴えを提起された場合や、調停を申し立てられた場合には、早めに弁護士に相談し、対応方針を検討することが望ましいでしょう。

法的な手続きの中では、被相続人の医療記録や証言など、有効性を裏付ける証拠を準備することが必要となります。

一般の方だけでは、これらの証拠を収集することは難しいので、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

遺言が出てきたらどうすべき?

遺言が出てきたらどうすべき?

遺言がないことを前提として相続手続きを進めようとしていたにもかかわらず、突然遺言書が発見されるというケースも少なくありません。このような場合には、以下の対応が必要です。

遺言書の種類を確認する

まず、その遺言書が「自筆証書遺言」なのか、「公正証書遺言」なのかなどを確認しましょう。自筆証書遺言であれば、家庭裁判所での検認手続きが必要です。一方、公正証書遺言は、検認手続きは必要ありません。

自筆証書遺言は検認前に勝手に開封しない

自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認前に開封してはいけません。

勝手に開封すると、5万円以下の過料の対象となる可能性があります。

遺言書を見つけたら、封筒ごと保管し、速やかに家庭裁判所へ検認の申立てを行うようにしましょう。

なお、封をされていない状況で保管されている自筆証書遺言もありますが、この場合も、遺言書が入っていた封筒や遺言書そのものを破損しないように丁寧に保管した状態で、検認を受ける必要があります。

内容に疑問がある場合は専門家に相談を

遺言の内容に納得できない、または不審な点があるという場合には、遺言が無効である可能性も踏まえ、弁護士に相談して対応を検討する必要があります。

遺言の内容によっては、遺産分割の手続きに進む前に、遺言無効確認などの法的措置を視野に入れるべきこともあります。

遺言に不審な点があったら弁護士にご相談ください

集合写真

遺言書は、亡くなった人の最終的な意思が記載されているもので、これを尊重する必要性は高いといえます。しかし、その一方で、形式や内容に不備があると無効になる可能性があります。また、遺言を巡って相続人同士が深刻な対立を生むこともあります。

そのため、次のような場合には弁護士への相談をすることが必要といえます。

  • 遺言書の筆跡が本人のものと違うように見える
  • 遺言者が作成当時に認知症の診断を受けていた
  • 特定の相続人だけに著しく有利な内容になっている
  • 他の相続人から遺言無効を主張された

遺言を巡るトラブルは、家族間の信頼関係を大きく揺るがす問題です。

感情的な対立が激しくなる前に、法的な観点から適切に対応することが大切です。

遺言に関して疑問や不安がある方は、一度、弁護士法人山本総合法律事務所にご相談ください。

ご本人の意思が正しく尊重されるよう、また、相続人全員の納得のいく解決が図れるよう、法的なサポートをすることが可能です。

是非お気軽にご相談ください。

 

この記事をシェアする

XFacebookLineHatena

この記事を書いた人

代表弁護士 山本哲也

弁護士法人山本総合法律事務所

代表弁護士 山本哲也

>>詳しくはこちら

初回相談60分無料

累計1,300件を超える相続に関する
ご相談をいただいております。
お気軽にご相談ください。

無料相談のご予約