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親の生活費としての使用は親の預金の使い込みになりますか?
- 執筆者弁護士 山本哲也
親の現金や通帳の管理を任されている場合でも、勝手な使い込みをすると親や他の親族から使い込んだ金銭の返還を求められる可能性があります。親の財産を管理する際は、私的な使い込みとならないよう十分に注意しなければなりません。
財産を管理している方の中には「何が使い込みになるのだろう?」、「親の生活費や介護費用として使うこともできないの?」などと不安を感じている方もいらっしゃるでしょう。
今回は、親の生活費や介護費用として使ったものは使い込みになるか、使い込みを疑われないためにできること、使い込みを指摘された場合の対処法などについて、相続問題に詳しい弁護士が解説します。
目次
親の生活費や介護費用として使ったものは使い込みになる?
親の預貯金や現金の使い込みをした場合でも、親族間の犯罪に関する特例により刑事責任を追及されることはまずありません(刑法244条)。
しかし、使い込みが法律上の理由のない勝手なものと判断されるときには、不当利得返還請求や損賠賠償請求によって金銭の返還を請求される可能性があります。
子どもが親の財産管理を任されていた場合、親の生活費や介護費用についての支出は、勝手な使い込みとは言えないため、金銭の返還を請求されることはありません。
一方、財産管理を任されていた場合でも私的な使い込みをしたり、無断で預貯金を引き出したりしたときには、親や他の親族から金銭の返還を求められる可能性があるでしょう。
【参考】遺産相続での預貯金の分け方
生活費として認められる範囲
親の預貯金や現金について、親の生活費の範囲を逸脱して私的に使用した場合には、法律上の理由のない勝手な使い込みと判断されてしまいます。
親の生活費と認められる範囲については、金額で一律に決まるものではありません。
生活費の範囲と認められるか否かは、使用した金額、具体的な使途、生活状況、資産などから個別具体的に判断されます。
たとえば、月に50万円という高額の費用を支出したケースでも、親の生活状況や資産によっては生活費の範囲内と判断されることもあります。
【参考】預貯金の名義変更と払い戻し
使い込みを疑われないためにできること
親の財産を管理する際は十分に注意しなければ、兄弟や他の親族から財産の使い込みを疑われる可能性があります。
使い込みを疑われないためには、預かった現金の額、引き出した預貯金の額、具体的な使途などを明確に記録しておくべきです。
金銭を支出したときの契約書や領収書などもできる限り保管しておくようにしてください。
また、入院や介護施設への入所など大きな問題が起こったときには、勝手に進めるのではなく、他の親族と相談しながら進めておくと安心です。
自分自身で親の財産を管理するのに限界を感じる場合には、他の親族と話し合ったうえで、任意後見や家族信託など最適な財産管理の方法を検討することをおすすめします。
【参考】預金使い込みの解決方法
使い込みを指摘されたら
親や他の親族に使い込みを指摘された場合には、財産管理の記録や領収書などの資料を開示して、使い込みの事実がないことを説明しましょう。
相手が納得してくれないときや十分な資料を準備できないときなど、話し合いで解決するのが難しい場合には、早めに弁護士に相談してください。
【参考】母の入院費等で引き出した金銭につき使い込みを疑われたものの、これを退けて適切な遺産分割を行った事例
まずは弁護士にご相談ください
財産の使い込みを指摘されてしまった場合、相手が納得しなければ調停や訴訟に発展してしまう可能性が高いでしょう。
使い込みを疑われないためには、財産管理の状況をいつでも説明できるよう資料を準備しておくことが重要です。
使い込みを疑われて他の親族との争いが避けられない場合には、弁護士に相談するのがおすすめです。
相続問題に詳しい弁護士に相談すれば、相手方との交渉をすべて任せられますし問題の早期解決につながる可能性もあります。
相続トラブルについて、弁護士への相談を検討されている方は、相続問題に詳しい山本総合法律事務所までお気軽にお問合せください。