母の入院費等で引き出した金銭につき使い込みを疑われたものの、これを退けて適切な遺産分割を行った事例
- 執筆者弁護士 山本哲也
事件の概要
事件の種類 | 遺産分割 |
解決方法 | 交渉・調停 |
相続人 | A子さん・父・兄・弟 |
相続財産 | 不動産、預貯金 |
相談の経緯

A子さんには遠方に住む兄がいましたが、兄は両親と不仲だったため、ほとんど連絡を取る事はありませんでした。
以前から母が治療のために入院しており、治療費の支払いのために母名義の口座から預金を引き出していました。
母が亡くなり、遺産分割を行う段階になったところで、突然、兄が依頼した弁護士から「母名義の口座から使ったお金の明細を出すように」と通知が届きました。
兄は母の口座から引き出された預金を「使途不明金」とし、使い込みがあったのではないかと疑っているようでした。
今後どのように対応すべきなのか分からないとの事で、弁護士に相談されました。
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解決方法

まず、使い込みではなく必要な出金であった事実を証明するために、母名義の預貯金をお預かりするとともに、使用目的の立証として領収書をお預かりしました。
預貯金の出金履歴及び領収書をもとに使用目的を説明する書面を作成し、兄の代理人弁護士に送付しました。
ところが、兄の代理人弁護士から返答が来る事はなく、遺産分割を進めるために裁判所に遺産分割調停の申し立てを行いました。
引き出した預金の使用目的を証明した事で、使途不明金は存在しなかった(使い込みはなかった)事が調停で認められ、適正な取り分での遺産分割が成立しました。
解決のポイント

今回のケースでは、①使途不明金の用途説明(使い込みがなかった事の証明)、②裁判所に行かずに遺産分割を行った点がポイントになりました。
①については、亡くなった方の預貯金から不正な引き出しがあったと疑われている状況ですので、引き出した金銭の使途を証明することが大切です。
そのため、依頼者からお預かりした領収書を整理し、使途を説明する表及び回答書(表の説明を記載したもの)を作成しました。
これを提出したことにより、使用目的が証明され、使途不明金はなかったものとして遺産分割調停を進めることができました。
②については、調停の相手方である兄が遠方に住んでおり、本来であれば兄の所在地にある裁判所に出頭しなければいけません(遺産分割調停は、相手方の住所地にある裁判所で行うことが原則となります)。
この点、ご依頼者が遠方の裁判所に出頭せずに済むように、電話で調停を進行できるように(電話会議システムといいます)、上申書を提出しました。
その結果、遠方の裁判所に出向く事なく法定相続分どおりの適正な遺産分割が成立しました。ご依頼者に余計な負担が発生せず、スムーズに解決することができたケースです。
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※本件は当事務所でご依頼をお受けした案件ですが、関係者のプライバシー保護等の配慮のため、案件の主旨を損ねない範囲で事実関係を一部変更している箇所がありますのでご了承ください。
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