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遺産の内容を開示してくれない相続人がいる場合の対処法を弁護士が解説
- 執筆者弁護士 山本哲也

目次
遺産の内容を開示してくれない・財産を隠す相続人がいる場合の対処法

よくあるお悩み
「親と同居していた兄が、通帳を見せてくれない」
「遺産はこれだけだと言われたが、本当にそれだけなのか信じられない」
遺産分割は、遺産の全体像がわからなければ始まりません。
しかし、財産の資料を握っている相続人が開示に応じないため、話が前に進まないというご相談は少なくありません。
本コラムでは、こうした場合の対処法と、ご自身でできる財産調査の方法について、群馬県高崎市・前橋市に拠点を置く山本総合法律事務所の弁護士が解説します。
まず知っておいていただきたいのは、遺産の内容を強制的に開示させる法的な手続きはないという点です。
そのうえで、取り得る手段は次の3段階です。
- 開示を求める。 弁護士から通知書を送ると、それまで応じなかった相手が開示に転じることがあります。
- ご自身で財産を調査する。 相続人は、相手の協力がなくても、単独で多くの調査ができます。
- 家庭裁判所の手続きを利用する。 調停では、裁判所を通じて資料を求める方法があります。
なぜ遺産を開示してくれないのか?裏に潜むリスクと注意点

開示を拒む背景には、いくつかの事情が考えられます。
単に手続きが面倒なだけという場合もありますが、次のような可能性も想定しておく必要があります。
親の預金を「生前に使い込み」している可能性
被相続人と同居していた相続人が、生前に預金を引き出して自分のために使っていたケースがあります。
通帳を見せられない理由が、この引き出しの記録にあることは珍しくありません。
使い込みが疑われる場合、預金の取引履歴を取り寄せて入出金を確認します。
介護費用として必要だったのか、それとも本人のために使われていなかったのか、金額や頻度、時期から検討していきます。
本人のために使われていなかったと認められる場合、不当利得の返還や、不法行為に基づく損害賠償を請求できる可能性があります。
ただし、これらの請求権には期限があるため、早めの確認が必要です。
遺産を独り占めしようと「財産隠し」をしている可能性
一部の財産だけを伝え、ほかの口座や不動産、有価証券を伏せておくというケースもあります。
「遺産はこれだけ」と示された資料が、被相続人の財産のすべてであるとは限りません。
被相続人の生活状況や収入から見て、示された遺産の額が少なすぎると感じる場合は、調査をしたうえで判断することをおすすめします。
【要注意】全容が不明なまま「遺産分割協議書」にサインする危険性
遺産分割協議は、一度成立すると、原則としてやり直しができません。
全容がわからないまま署名押印してしまうと、後から財産が判明しても取り戻すことが難しくなります。
とくに注意が必要なのは、「本協議書に記載のない財産は、〇〇が取得する」という条項です。
この一文があると、あとで多額の預金が見つかっても、その相続人のものになってしまいます。
逆に、「後日判明した財産については、別途協議する」という条項を入れておけば、そのときに改めて話し合うことができます。
提示された協議書の内容に納得できない場合は、署名する前にご相談ください。
相手が拒否してもあきらめないで!遺産を特定する「自ら行う財産調査」

相続人は、ほかの相続人の同意がなくても、単独で財産の調査ができます。
必要な書類は、被相続人の死亡が記載された戸籍(除籍)謄本、ご自身が相続人であることを示す戸籍謄本、身分証明書、印鑑などです。
預貯金の調査:金融機関での「残高証明書」と「取引履歴」の取得
心当たりのある金融機関に、相続人として照会します。
支店がわからない場合も、全店を対象とした照会(名寄せ)に応じてもらえるのが一般的です。
取得するものは2つです。
- 残高証明書:亡くなった日の時点の残高がわかります。遺産の額を確定するために必要です。
- 取引履歴:一定期間の入出金がわかります。生前の使い込みや、ほかの金融機関への送金、保険料の引き落としなどが判明することがあります。
取引履歴については、共同相続人の一人からでも開示を求められます。
相手の協力は不要です。
なお、取り寄せられる期間には金融機関ごとの限りがありますので、早めの請求が大切です。
不動産の調査:市役所での「名寄帳」取得と法務局での登記確認
市町村役場で「名寄帳」(固定資産課税台帳)の写しを請求すると、被相続人がその市町村内に持っていた不動産を一覧で確認できます。
ただし、名寄帳でわかるのはその市町村内の物件だけです。
被相続人が各地に不動産を持っていた可能性がある場合は、心当たりのある市町村ごとに請求する必要があります。
物件がわかったら、法務局で登記事項証明書を取得し、名義や抵当権の有無を確認します。
評価額は、市町村役場の固定資産評価証明書で把握できます。
有価証券(株式など)や生命保険の調査方法
証券会社がわかっていれば、直接照会します。
わからない場合は、証券保管振替機構(ほふり)に「登録済加入者情報」の開示を請求すると、被相続人が口座を持っていた証券会社を特定できます。
生命保険については、生命保険協会の「生命保険契約照会制度」を利用できます。
加盟する各生命保険会社に対して、契約の有無を一括で照会してもらえる仕組みです。
預金の取引履歴に保険料の引き落としが残っていれば、そこから保険会社を特定できることもあります。
見落としがちな「マイナスの財産(借金)」の調査
借金も相続の対象です。
プラスの財産だけを見て遺産分割を進めると、あとから返済を求められることになります。
借入の有無は、信用情報機関に開示を請求することで確認できます。
銀行はKSC(全国銀行個人信用情報センター)、クレジットカード会社や信販会社はCIC、消費者金融はJICCが主な窓口です。3か所に請求しておくと安心です。
負債が多い場合は、相続放棄も検討することになります。
相続放棄は、原則として相続の開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要がありますので、負債の調査は急ぐ必要があります。
なお、ご自身での調査で判明しないものがあっても、弁護士にご依頼いただければ、弁護士会を通じて金融機関などに照会する制度(弁護士会照会)を利用できる場合があります。
当事者同士で難しい場合|遺産分割の流れ

調査を経ても話し合いがまとまらない場合は、次の流れで進みます。
遺産分割協議
相続人全員で話し合います。
合意できれば、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割調停
家庭裁判所に申し立てます。
調停委員が双方の話を個別に聞くため、相手と直接やり取りする必要がありません。
財産の範囲に争いがある場合、裁判所を通じて金融機関などに資料を求める手続き(調査嘱託)を申し立てることもできます。
遺産分割審判
調停でも合意できない場合、裁判官が分割の内容を定めます。
開示を拒む相手との話し合いは平行線になりがちです。
早い段階で調停に進んだほうが、かえって解決が早いこともあります。
まずは弁護士にご相談ください

「兄弟を疑いたくはないが、このままでは納得できない」
そのようなお気持ちを抱えたまま、お一人で相手と向き合う必要はありません。
ご自身で調査を始める前にご相談いただければ、何をどの順番で調べるべきかをお示しできます。
山本総合法律事務所は、2007年の創立以来、地元群馬の皆様から相続に関するご相談をお受けしてきました。ご相談実績は1,300件を超えています。
同じビル内の税理士・司法書士と連携し、相続税の申告や不動産の名義変更までを見据えたサポートを行っています。
高崎・前橋の2拠点に8名の弁護士が在籍し、チーム体制で対応いたします。
初回60分のご相談は無料です。
ご相談のご予約は、お電話・問合せフォーム・LINEにて。
お電話は、平日・土日祝日の9:00〜20:00に受け付けております。
群馬県内および近隣の地域で、遺産分割や財産調査にお悩みの方は、山本総合法律事務所へお気軽にお問い合わせください。
