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遺留分侵害額請求に期限や時効はありますか?

遺留分侵害額請求に期限や時効はありますか?

遺言や生前贈与によって特定の相続人に多くの遺産が渡った場合でも、他の法定相続人には最低限保証された取り分=遺留分(いりゅうぶん)があります。

その遺留分が侵害された場合には、「遺留分侵害額請求」という手続きによって、お金で取り戻すことができます。

ただし、この請求には法律上の期間制限(時効や除斥期間)があるため、注意が必要です。

遺留分侵害額請求の期限や時効について、群馬県高崎市の弁護士が解説します。

遺留分の請求における 2 種類の期間制限

遺留分の請求における 2 種類の期間制限

遺留分とは

遺留分とは、不平等な遺言(例えば、「全財産を長男に譲る」)などにより相続人が害される場合に、一定の額を保障するものです。

被相続人の財産処分の自由や取引の安全と、相続人の生活の安定及び相続財産の公平な分配とのバランスをとる観点から定められました。

相続の状況に応じ、法定相続分の一定割合が遺留分として保障されます。

たとえば、全財産を第三者に遺贈する内容の遺言があっても、法定相続人にはその一部を取り戻す権利が認められています。

 

【参考】遺留分の基本

遺留分侵害額請求とは

実際に遺留分を取得するためには「遺留分侵害額請求」を行う必要があります。

黙っていては遺留分を取り戻せません。

そして、遺留分侵害額請求を行うことができる期間には、「消滅時効」と「除斥期間」の2種類の期間制限があります。

権利義務関係を早期に安定させる観点で、このような2種類の期間制限(タイムリミット)が法律上の制度として設けられています。

期間制限を超過しないよう、計画的に遺留分侵害額請求を行わなければなりません。

 

【参考】遺留分を請求するには

1年の「消滅時効」に注意

「消滅時効」とは、以下の両方を知ったときから1年以内に請求しなければならないという制限です。

  • 被相続人が亡くなったこと
  • 自分の遺留分が侵害されていること

もし1年を過ぎてしまうと、相手方が時効を主張すれば遺留分を請求することが困難になります。

ただし、催告などによりカウントダウンを一時的に停止させることは可能です。

 

【参考】遺留分を請求するには

10年の「除斥期間」は絶対的な期限

除斥期間は、相続開始から10年間です。

時効との大きな違いは、相続開始を知らなかったとしても10年間のカウントダウンが始まる点です。

加えて、時効のように催告といった方法でカウントダウンを停止させる手段がありません。

 

特段の事情があれば例外的に除斥期間を過ぎても遺留分侵害額請求権を行使できる場合もありますが、極めて例外的なケースです。

 

【参考】遺留分を請求された時の対処方法〜支払い義務は?支払いが難しい場合の対応〜

時効が迫っているときの対処法は?

遺留分の時効

上記のとおり「時効」と「除斥期間」の2つのタイムリミットがありますが、最短のタイムリミットは1年の消滅時効です。

消滅時効が近づいてきた場合は、直ちに時効のカウントダウンを停止させなければなりません。

ステップ1:時効のカウントを「止める」

停止させる手段の典型例は、遺留分を侵害している者(遺留分を侵害する遺贈や贈与を受けた者)の全員に対し、「遺留分侵害額請求を行う意思を示す」ことです。

最もスピーディで、かつ、裁判所を関与させる必要もないので裁判所に納める費用も発生しません。

配達証明付きの内容証明郵便で送る

意思表示は、口頭のみだと後々に言った言わないのトラブルを招き、最悪の場合は時効のカウントダウンと停止できずに消滅時効が完成してしまうおそれがあります。

そこで、きちんと証拠に残すためにも、必ず配達証明付きの内容証明郵便で行いましょう。

意思表示は相手方に到達する必要があるますが、この方法であれば遺留分侵害額請求権を行使する意思表示を行ったことも相手方が受領したことも客観的証拠として残ります。

ステップ2:全ての関係者に送る

次に、意思表示を行う相手方にも漏れがないよう注意しましょう。

相手方が複数いる場合は、その全員に対し遺留分侵害額請求権を行使する意思表示をしておかないと、消滅時効が完成してしまいます。

ステップ3:6か月以内に正式な手続きを

意思表示を行っても消滅時効のカウントダウンが6か月の間、一時的に停止するだけですから、この間に裁判所へ調停を申し立てる等の措置を行わないと、消滅時効が完成してしまいます。

消滅時効や除籍期間が近づいてきても焦らないよう、予め計画的に遺留分侵害額請求権を行使する準備をしておくことが肝要です。

 

【参考】遺留分と遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)について

遺言書の有効性を争っているときの注意点

遺言書の有効性を巡って争いになっている場合でも、それとは別途で遺留分侵害額請求権の意思表示が必要です。

遺言書が無効であることを主張していても、遺留分侵害額請求権を行使する意思表示を行ったことになりませんし、消滅時効のカウントダウンが停止するものもありませんので注意しましょう。

意思表示をしただけで安心してはいけません。

 

【参考】遺言書が無効になるケースがある?遺言無効を訴える方法

 

相続トラブルを避けるためには早めの対応が重要

以上で解説したように、遺留分を請求したいと考えた場合、次の4点が重要です。

  • 遺留分を取り戻したいと思ったら、すぐに行動する
  • 1年・10年という期限を忘れずに
  • 配達証明付き内容証明郵便等で請求の意思表示を行う
  • 6ヶ月以内に正式な手続きを開始する

遺留分を巡る争いは、時間との勝負であると同時に、感情的な対立に発展しやすいデリケートな問題でもあります。

相続トラブルに強い専門家に早めに相談することをおすすめします。

遺留分侵害額請求に関するご相談は弁護士法人山本総合法律事務所へ

弁護士集合写真

遺留分侵害額請求は、相続財産全体の把握や遺留分侵害額の算定など、それを行使するためには専門的知識が求められます。

なおかつ、消滅時効や除斥期間の期間制限がありますから、迅速性も求められます。

期間制限を超過しないようスムーズに遺留分侵害額請求を行うためには専門家である弁護士のサポートが不可欠といっても過言ではありません。

 

また、数ある紛争類型の中でも遺留分侵害額請求をはじめとする相続問題は当事者同士の感情的対立が激しく、自分で手続きを進めるのは強いストレスを受けます。

弁護士へ依頼し自分の味方になってもらうことでストレスも軽減できるでしょう。

 

当事務所ではこれまで遺留分侵害額請求をはじめとする相続に関するご相談を受け、数多くの相続案件をサポートしてきました。

法的観点のサポートはもちろん、依頼者の気持ちに寄り添い丁寧に対応しております。

当事務所の経験とノウハウを持つ専門の弁護士がご相談をお受けしますので、まずはお気軽にお問合せください。

 

【参考】山本総合法律事務所の解決実績

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この記事を書いた人

代表弁護士 山本哲也

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