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遺留分侵害額請求が届いたら?支払わないとどうなる?弁護士が教える「拒否できるケース」と「支払えない時の対処法」
- 執筆者弁護士 山本哲也

目次
「遺留分侵害額請求」が届いてお困りではありませんか?

相続が始まると、落ち着く暇もなく不意の連絡が飛び込むことがあります。
中でも「遺留分侵害額請求書」が届くと、不安を抱く方も少なくないでしょう。突然大きな金額を請求されることも珍しくなく、「本当に支払わなければならないのか」「そもそも相手の主張は妥当なのか」などと動揺するものです。
遺留分は、一定の相続人に認められた、最低限の遺産取得を保障する制度です。しかし、遺留分を請求された側にとっては、相続財産を受け取った直後に突然支払いを求められる制度でもあり、精神的・経済的負担は小さくありません。
そこで、本コラムでは、遺留分請求が届いた場合に想定される展開やリスク、拒否できる場合とできない場合の違い、そして支払えないときに取るべき実践的な対処法について、解説します。
遺留分請求を「無視」したらどうなるのか

遺留分侵害額請求を受け取った際に「何もしない」「放置する」という対応をすると、結果として大きな不利益を招きかねません。
請求を受けたにもかかわらず長期間連絡を取らず、返答もしないままでいると、相手方は法的手続きを採るのが一般的です。
最初に行われるのは、内容証明郵便による請求です。これを放置すれば、家庭裁判所への調停申立てに進む可能性が高くなります。
調停は裁判所での話し合いの場ですが、この段階でも、出頭しないなど無視をする状況が続くと、調停は不成立となります。手続きは裁判に移行して、ここでも無視を貫くと判決が下されます。
支払い義務を認める判決が確定した場合、それに従わなければ、預金口座の差押えや給与の差押えなど強制執行が行われます。請求を受けてから時間が過ぎるほど、遅延損害金が加算され、結果的に支払い額が増えるという不利益も生じます。
このように、「無視する」という選択は決して問題の解決にはつながらず、むしろ状況を悪化させるだけといえます。
遺留分の支払いを「拒否できる」ケース

遺留分侵害額請求と聞くと、絶対に応じなければならないという印象を受けるかもしれません。しかし、法律上、請求に応じる必要がないケースも存在します。
相手方が遺留分権利者でない場合
まず重要なのは、相手方が遺留分を有する相続人(遺留分権利者)であるかどうかです。遺留分が認められるのは、配偶者、子(および代襲相続人)、そして直系尊属のみです。兄弟姉妹には遺留分が認められていません。そのため、もし兄弟姉妹が遺留分を理由として金銭を請求してきた場合には、法的に応じる必要がありません。
除斥期間が経過していた場合
また、遺留分請求には厳格な期間制限があります。相続開始と遺留分が侵害された事実を知った時から1年が経過すると、相手方は請求する権利を失います。これは「除斥期間」といい、相手方の請求がこの期間を過ぎて行われたものであれば、法的には拒否することができます。
相手方の主張が誤っている場合
さらに、相手方が主張する遺留分侵害額そのものが誤っている場合も少なくありません。遺留分の計算は非常に複雑で、生前贈与の扱いや特別受益の有無、寄与分の認定、さらには不動産や株式などの評価方法によって結果が大きく変わります。計算し直してみたところ、そもそも遺留分を侵害していないことが判明し、支払う必要がなかったというケースも実際にあります。
支払いを「拒否できない」ケース

一方で、法律上、支払いを拒否することができないケースも存在します。
適正な請求の場合
相手方が遺留分を持つ相続人であり、かつ法律で定められた期間内に適切な請求を行っている場合には、原則として支払い義務が生じます。
遺産の内容が明確な場合
また、公正証書遺言などにより遺産の内容が明確で、遺留分を侵害していることが明らかである場合には、請求が正当である可能性が高くなります。調停や裁判で遺留分侵害が認められれば、その判断には強制力が生じますから、もはや拒否することはできません。この段階で支払いを怠れば、前述のとおり強制執行の対象となり、財産や給与が差し押さえられる危険があります。
遺留分を請求されたら「まず」やるべきこと

遺留分侵害額請求を受けたとき、最も大切なのは「焦らず、順序立てて対応すること」です。
相手方の主張の整理
まずは、相手方から送られてきた内容証明などの書面を丁寧に読み、誰がどのような根拠に基づいて、どの程度の金額を請求しているのかを整理する必要があります。請求書に記載された期限も確認し、対応の優先度を把握しましょう。
相続財産の把握
次に、遺留分の算定の基礎となる相続財産の全体像を正しく把握することが重要です。相続財産の中には、不動産や預貯金のほか、被相続人が生前に行った贈与や援助など、遺留分に影響する事実が含まれている場合があります。特に、生前贈与や特別受益の有無などは、遺留分の計算に大きく影響するため、できる限り正確な情報を集める必要があります。
不動産の評価方法の確認
さらに、不動産が含まれている場合には評価方法にも注意が必要です。不動産の評価はひとつではなく、固定資産税評価額、路線価、実勢価格など、どの基準を採用するかによって結果が大きく異なることがあります。
遺留分は原則「現金」 支払えない場合の対処法

遺留分侵害額請求が認められた場合、原則として「現金による支払い」が必要です。
しかし、相続財産が不動産に偏っている場合や、相続税の支払いなどで現金が不足している場合、請求された金額をすぐに用意できないこともあります。そのような場合には、いくつかの対処法があります。
「分割払い」の交渉をする
まず、最も多く用いられるのが「分割払いの交渉」です。法律上、分割払いが当然に認められるわけではありませんが、相手方との合意が得られれば、毎月一定額を支払う方法や、半年ごとに分けて支払う方法、あるいは一定期間利息のみを支払って最後にまとめて清算する方法など、柔軟な対応が可能です。
不動産の売却、現金化
次に、不動産を売却して支払いに充てる方法も一般的です。不動産が相続財産の大部分を占める場合には避けられない選択肢となることもありますが、売却には時間がかかることが多いため、その間の対応として、一部金額の先払いや、支払期限の延長について交渉する必要があります。
例外的な方法:代物弁済
また、例外的ではありますが、相手方が納得する形で不動産の共有持分を渡すことで遺留分請求に応じる、いわゆる代物弁済と呼ばれる方法もあり得ます。これは相手方の了解が不可欠であり、慎重な判断が求められます。
金融機関からの借り入れ
さらに、相続財産を担保として金融機関から借入を行う方法もありますが、将来的な返済負担も考慮しつつ、無理のない計画を立てる必要があります。
まずは弁護士にご相談ください

遺留分侵害額請求は、相続分野の中でも特に専門性が高く、また感情面の対立も生じやすい問題です。
自己判断で対応してしまうと、本来支払う必要のない金額に応じてしまったり、逆に支払いを怠って不必要な法的トラブルに巻き込まれたりする可能性があります。
弁護士であれば、請求が法律上妥当なものかどうかを丁寧に精査し、遺留分額の算定を正確に行い、必要に応じて相手方との交渉や調停・裁判での代理人としての対応も可能です。
また、支払い方法についても相談しながら負担の少ない解決方法を探っていくことができます。
弁護士法人山本総合法律事務所は、遺留分侵害請求の実績が豊富で、知見が深い弁護士が在籍しています。
遺留分侵害請求を受けてお困りの方は、ぜひお早めにご相談ください。
