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故人の預貯金は相続したいが、山林・不動産は相続したくない方へ
- 執筆者弁護士 山本哲也

身内の方が亡くなったとき、預貯金は相続したいけれど、山林や農地、空き家などの不動産は不要なので相続したくない、と考えることもあるでしょう。
相続放棄をすれば不動産を相続することはなくなりますが、相続放棄にはデメリットも多いので注意が必要です。状況に応じて、最善の対処法を検討することが重要です。
この記事では、預貯金は相続したいけれど不動産は相続したくないという方に向けて、その希望を実現する方法について解説します。
目次
不動産を相続したくない場合の遺産分割交渉のポイント

相続が発生すると、被相続人(亡くなった方)の財産に属した一切の権利義務が相続人に承継されます。
しかし、具体的にどの財産を誰が取得するかは、相続人全員による遺産分割協議で自由に決めることができます。
そのため、他の相続人の中に不動産を相続したい人がいれば、ご自身は不動産の相続を回避できます。
しかし、山林や農地、田舎の空き家などは、誰も相続したがらないケースも多いものです。
その場合には、問題となっている不動産の評価額を、できる限り正確に割り出してみましょう。
予想より高い評価額であれば、すぐに売れなくても取得しておきたいと考える相続人が出てくる可能性もあります。
なお、不動産の評価額を正確に割り出すためには、不動産鑑定士に鑑定を依頼するのが最も有効ですが、最低でも数十万円の費用がかかってしまいます。
一般的には不動産会社に簡易査定を依頼しますが、この場合には、依頼する不動産会社によって査定額に幅が出ることが多いので、注意が必要です。
相続人全員が納得して協議を進めるためには、複数の不動産会社から査定書を取り、その平均価格を評価額とするなどの工夫も必要です。
なお、特定の相続人が不動産を相続することにより、その人が法定相続分を超える遺産を取得することになる場合は、他の相続人は代償金の支払いを求めることができます。
このような遺産分割の方法のことを「代償分割」といいます。
しかし、遺産分割協議をまとめるためには、あえて代償金を請求せず、預貯金などの流動資産のみを相続することも考えられるでしょう。
山林・農地が相続財産にある場合の相続について
被相続人が山林や農地を所有していれば、当然ながら、これらの山林や農地も相続財産となります。
山林や農地を相続すると、所有者としての管理責任が生じます。
その山林や農地を活用するのであればよいですが、被相続人が営んでいた農業や畜産業などを引き継ぐ場合でない限り、山林や農地を有効活用するのは難しいのが実情です。
そうすると、相続した山林や農地の利用価値が乏しいにもかかわらず、定期的に整備や清掃などの管理作業を行わなければならない上に、固定資産税も支払い続けていかなければなりません。
その上、山林や農地は一般的に評価額が低く、売却しようにも買い手が見つからないことも多いです。
このように、山林や農地の相続にはデメリットが多いため、活用する予定がない場合は手放すことを検討した方がよいでしょう。
相続をする場合、放棄をする場合、限定承認をする場合

相続が発生した際、相続人には「単純承認」、「相続放棄」、「限定承認」という3つの選択肢があります。
以下では、相続財産の中に不動産があるケースにおいて、それぞれの結末をご紹介します。
単純承認
単純承認とは、被相続人が有していた財産を、プラス・マイナス問わず、無条件にすべて引き継ぐことです。
この単純承認を選択すると、被相続人の預貯金だけでなく、不動産も相続することになります。
ただし、遺産分割協議で他の相続人が不動産を引き取ってくれれば、ご自身が不動産を相続することを回避できます。
単純承認をするためには、手続きは不要です。
相続開始(被相続人が亡くなったこと)を知ったときから3ヶ月以内に相続放棄も限定承認もしなかった場合や、遺産を一部でも消費した場合には、単純承認をしたものとみなされることに注意しましょう。
相続放棄
相続放棄とは、被相続人が有していた財産に関する権利・義務の一切を放棄することです。
相続放棄をすると、その相続に関しては初めから相続人にならなかったものとみなされますので、プラス・マイナスを問わず、何も財産を引き継がないことになります。
したがって、相続放棄を選択することで不動産の相続を回避できますが、その反面で、預貯金も相続できないという大きなデメリットがあります。
被相続人が不動産を所有していた反面、借金などで多額の負債を抱えていた場合や、プラスの財産が乏しい場合などでは、相続放棄が最も有効な選択肢となります。
相続放棄をするためには、相続開始を知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所で申述の手続きをしなければなりません。
限定承認
限定承認とは、被相続人が有していたプラスの財産の範囲内で、マイナスの財産を引き継ぐことです。
「限定」というのは、プラスの財産の範囲を超えてマイナスの財産を引き継がないという意味であり、取得する財産を選べるわけではないことにご注意ください。
被相続人の財産関係が複雑で、プラスとマイナスのどちらが上回るかを3ヶ月以内に判断することが難しい場合には、限定承認も有力な選択肢となります。
ただし、限定承認は、相続人全員で行う必要があるなど手続きが複雑なこともあり、実務上はあまり利用されていません。
不動産の相続を回避するための対処法としても、適しているとはいえません。
田舎の家を相続放棄するメリット・デメリットと注意点

地方で立地の悪い家屋などは、相続しても売却するのが難しいこともあります。
そんなとき、相続放棄を選択すれば不要な家の相続を回避できます。
固定資産税を支払う必要もなくなりますし、ケースによっては相続争いや、相続に関する面倒な手続きから解放されるというメリットも得られます。
ただし、相続放棄をするとプラスの財産も一切受け取れないことには、くれぐれも注意が必要です。
また、相続人全員が相続放棄をした場合には、その家に住んでいた人や管理していた人に、相続放棄後も保存義務が残ります。
家を放置したために倒壊や火災などによって近隣に被害が発生した場合には、多額の損害賠償義務を負うことがありますので、適切に管理を継続しなければなりません。
この保存義務を免れるためには、次にご紹介する方法で家を手放すか、または家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任を申し立てる必要があります。
相続放棄以外でいらない不動産を手放す方法はあるか

相続放棄以外でも、以下の方法によって、いらない不動産を手放せる可能性があります。
売却をする
ひとつ目の方法は、不動産をいったん相続した後、売却することです。
山林や農地、立地が悪い空き家などは需要が低いものの、価格にこだわらなければ買い手が見つかる可能性もあるでしょう。
不動産会社の中には、山林や農地の売却が得意なところもありますし、自社で買い取る業者もあります。
いらない不動産の処分に困っているなら、価格にこだわらず売却するのもよいでしょう。
相続土地国庫帰属制度を利用する
ふたつ目の方法は、一定の条件を満たす場合に限りますが、相続土地国庫帰属制度を利用して国に引き取ってもらうことです。
相続土地国庫帰属制度とは、所有者不明土地の増加や管理負担の増大を防ぐために国が創設した制度のことであり、2023年4月27日から開始されています。
ただし、以下の土地は、この制度の対象外とされています。
- 建物がある土地
- 担保権や使用収益権が設定されている土地
- 他人の利用が予定されている土地
- 土壌汚染されている土地
- 境界が明らかでない土地
- 所有権の存否や範囲について争いがある土地
その他にも、急な崖がある土地や、管理・処分のために過大な費用や労力を要する土地などは、申請が不承認となって引き取ってもらえないことがあります。
相続土地国庫帰属制度を利用するためには、法務局(本局のみ)での申請が必要です。
申請の際には、審査手数料(1筆あたり1万4,000円)を納める必要があり、申請が承認された場合には負担金を納める必要があります。
負担金は原則として20万円とされていますが、例外も多く、土地の立地条件や状況などによっては、50万~100万円ほどを要することもありますので、多めに見積もっておいた方がよいでしょう。
相続の注意点と弁護士に相談すべきケース

いらない不動産の相続問題を適切に解決するための主な注意点をまとめると、以下のようになります。
- 不動産の評価額を適正に割り出す
- 相続人の中に不動産を引き取ってもよい人がいないか話し合う
- 相続を単純承認するか、相続放棄するかを3ヶ月以内に判断する
- 相続放棄の手続きを正しく行う
- 全員が相続放棄をした場合には、相続財産清算人の選任申立を検討する
どのステップも、慎重に行う必要があります。分からないことがあるときや、迷ったとき、相続人同士で揉めたときなどは、いつでも弁護士にご相談ください。
早期に弁護士へ相談すれば、状況に応じて最適な対処法を提案してもらえます。
他の相続人との交渉や家庭裁判所での手続きが必要な場合は、弁護士に依頼して代行してもらうことも可能です。
不動産を引き取ってくれる相続人がいる場合はよいですが、その他のケースでは、早めのご相談をおすすめします。
是非弁護士にご相談ください

相続において、欲しい財産だけを取得し、いらない財産を排除することは、意外に難しいことが多いものです。
相続人同士で揉めたり、不要な不動産を引き継いで管理責任を負わされたりする前に、是非弁護士にご相談ください。
弁護士法人山本総合法律事務所では、相続に関するさまざまな問題について、豊富な解決実績がございます。
遺産分割協議や相続放棄手続きなどの代行はもちろんのこと、不動産の相続でお困りのケースなど、どのような状況でも親身なサポートを心がけております。
不動産の相続でお困りなら、いつでもお気軽に当事務所へご相談ください。
